第6話 ノート page5

 本格的にママが嫌いになったのは、中学に入って間もない頃でした。

(この先は女の私にとってとても書き辛い部分なのですが、パパも知っていることだから思い切って書くことにします。)

 学校行事の映画鑑賞があった日。

 街の映画館で映画を観たあと、現地解散ということになり、友だちと開放的な気分になって地下鉄の駅に向かって歩いていたとき、私は自分の目を疑いました。

 友だちが私の顔色が変わったのに気づいて、

「アユ、どうかしたの?」

 と、怪訝そうな顔で訊ねます。

 私は咄嗟に、「ううん、何でもない」と言ってしまいました。

 でも内心はそれどころではありませんでした。

 ママが知らない男の人と一緒に、仲よく歩いているのを目撃してしまったのです。

 目の前が真っ暗になるくらいのショックを受けたのです。

 私は悪い夢でも見ているようで、とても信じることができませんでした。

 私は友だちに、「ごめん、急に用を思い出したから、ここでサヨナラするわ」と伝えたあと、気づかれないようにママたちを尾行しました。

 しばらく距離を置いてついてゆくと、ママたちは昼間にふさわしくない場所に足を向け、そしてひとの目を避けるようにある建物に消えたのです。

 私の心臓は握り潰されるくらい痛みました。

 放心状態のまま地下鉄に乗った私は、このまま家に帰る気にもなれず、かといって自分の気持を偽って友だちと会う気にもまれませんでした。

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