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萌を除く三人はオカルト研究会の部室の外に出た。
「こんなところに、面白いものなんてなにもないよ。萌は物好きだな」と硯は言う。
「あら? 面白いものしかないから、硯はオカルト研究会に入ったんでしょ?」萌は言う。
「……いや、まあ、そうんなんだけどさ」
硯は言う。
硯はオカルトが大好きで、その硯の好きなものがこの部屋の中にはたくさんあって、でも、それは萌にはまったく興味のないもので、萌が見てもつまらないだけだよ、と硯は言いたかったのだけど、なんだか今日の萌はいつもよりもすごく楽しそうにしているように見えたので、硯は、まあ、いいかな、という明るい気持ちになった。
「じゃあ、早川さん。これ、部室の鍵ね」
そう言って朝日奈くんから部室の鍵を手渡される。その鍵は、宇宙人のグレイのキーフォルダーがついている鍵だった。
「帰るときは職員室にいる顧問の鈴谷先生に鍵を返却してね」
「オカルト研究会の顧問って、鈴谷先生なんですか?」
「そうだよ。鈴谷林太郎先生」
鈴谷林太郎先生は音楽の先生だった。なので、なにかオカルトと鈴谷先生に関係があるのかと聞くと、「たまたま暇で余ってただけだって」と朝日奈くんは笑って言った。
「じゃあね、萌。また明日」
「さようなら、先輩」
「また、いつでもきてよ。あ、UFOの召喚の儀式の日にはできたら参加してね」
硯、葉摘、朝日奈くんの三人はそれぞれそう言って、オカルト研究会の部室の前をあとにした。
そして、赤い夕日の差し込む、静かで誰もいない、学校の校舎の隅っこにある小さな世界の中には、早川萌、一人きりになった。
萌は一人には慣れているつもりだった。
でも、オカルト研究会のみんなといると、なんだか毎日が楽しくて、だから、みんながいなくなると、萌の心はすごく、すごく寂しくなった。
「楽しんじゃだめだよ」
そんなことを自分に言い聞かせてから、萌は一人、オカルト研究会の部室の中の探索を始めた。
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