「初めまして。早川さん。僕は朝日奈勝って言います。オカルト研究会の一応部長をやっています」

 パイプ椅子から立ち上がって朝日奈くんはそう言った。

 それから朝日奈くんは萌に手を伸ばして握手を求めた。

「どうも」そう言って、遠慮がちに朝日奈くんの手を萌は握ってそう言った。

「朝日奈くんも幽霊。いると思うよね。当然」

 まだ名前も知らない女子生徒(萌が知らないってことは、たぶん、年下、新入生はいないから、二年生の生徒だろう)の反対側にあるパイプ椅子に硯は座ってそう言った。パイプ椅子は部屋の端っこの流し台の横に幾つか数が立てかけて置いてあった。

 テーブルにはもう一人、パイプ椅子が用意されている。

「萌はそこに座って」

「うん」

 萌は硯の言葉通りに、そのドアの正面に当たる椅子に座った。

「もちろんいると思うね」

 にっこりと嬉しそうに笑って(なんだか硯にそっくりな笑いかただった)朝日奈くんはそう言った。

「ほらね」

「だから。それはテレビや、映画、あと動画とかの見過ぎだって」萌は言った

 それから萌はオカルト研究室の部室の中を、蛍光灯の白い光の中で、もう一度観察した。

 狭い部屋の横の壁には大きな棚があって、後ろはドア。そして正面にはもう一つの大きな机と、その後ろに窓、それから申し訳ない程度の観葉植物が一つ、置いてあった。

 左右の棚の中には、萌から見て右側には本や資料がぎっしりと詰まっている。棚の上にはダンボールの箱も置いてある。

 左の棚にはいろんな怪しいもの(人形とか、石とか)、それから雑誌。一つ手に取ってみると、そこには『雑誌ムー』の文字が書かれていた。

 それから、その横にはクトゥルフ神話の本や、クトゥルフ神話のTRPGのゲームブックのようなものが何冊かあるようだった。

「今度、一緒に早川さんもやる? クトゥルフ神話TRPG?」

 朝日奈くんがにこにこ笑ってそう言った。

「いえ、遠慮しておきます」

 と、朝日奈くんを見て、萌は言った。

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