きみとストーキング
霜月 風雅
第1話
朝、カーテンから差し込んでくる眩しい太陽光でまた朝がきたことを確認する。いつまでも夢の中にいられたらいいのにと思いながらも、渋々布団から抜け出してカーテンを開ける。私の世界を構成している物は、そんなに多くない。私の部屋、そこから見える範囲の外。家族、小説、音楽。それから。
~♪
部屋の空気を入れ替えるために開けた窓から入ってくる風は、お隣を通ってきたらしく金木犀の香りを含んでいる。その風を嗅ぎながら、私は無機質なコール音を鳴らす携帯を取った。
いつもながら、どこで見ているのかと思うほどにピッタリなタイミングで送られてくるメールに開け放している窓の外を無駄だとしりつつ、探る。
件名・おはようございます。
本文・今日は、気温も高くていい天気だよ。ちょっと外に出るのには最適だね。降水確率も10%とそんなに高くないから、洗濯なんて干してみたら?
余計なお世話だ。そう思うくらいにどうでもいい内容のメールを読んで、また窓の外を見た。世界のほとんどの人が仕事で忙しく動き回っている今、私は何もすることがないふりをして布団の上に座っている。メールを毎日寄越すこの人だって、きっと仕事くらいはしている。なんとなくだけど、そう確信している。
私は、布団を畳み着替えを済ませ、さっさと部屋を出た。家族はみんな仕事やら学校やらに行っていて日中はいない。私は、欠伸をしながら頭の中で洗濯物を探した。
私は、俗世的に言うと引きこもりのニートだ。だけど、格別に外に出られないというわけではない。月に一回は、車に乗って近くの古本屋に行く。家の中であれば、普通に動き回るし、家族とも話をする。部屋は弟と相部屋だし、料理は割りと好きだ。
ただ、仕事はしていない。学校にも、ほとんど行かなかった。車の免許が取れたのは、本当に奇跡のようだったし、だからといって車の運転はほとんどしないが。それに家族以外の人と話をするのは苦手だ。
「輝ちゃんは、言うことが性格悪い。はっきり言って腹黒だよ。」
全く意図せずに過ごしていた中学時代、友だちにそんなことを言われた。いや、そもそもその子は友だちだと思っていなかったのかもしれない。友だちだと思っているなら、こんな容赦のないことは言わないだろう。
別段、そのことを気に病んだわけではないが、私と話すと相手が不快な思いをするのであればあまり話さないほうがいいかもしれない。と考えていることはある。
話すこと自体は、割りと好きだ。自分の好きなこと、見たこと、なんでも話したいと思う。ただ、私なんかの話を聞いてもらうのは申し訳ないような気がして他人に話すことはしない。私は、私に話す。話しかける。
「朝ごはんは、納豆!納豆って、なんであんなにネバネバしているんだろう。私が思うにあのネバネバは自己再生液なんじゃないかと思う。だから、あんなにネバネバしてるんだ。」
冷蔵庫を開けて中に入っている食材から、残り物、処分品を探す。私は、ニートだから家族の誰も食べない残り物を処分するためにいる。賞味期限が切れている納豆をご飯に乗せた。
~♪
もぐもぐと納豆を食べ始めると、これまたピッタリなタイミングで携帯が鳴る。納豆でネバネバしている口を動かしながら携帯を開いて受信したばかりのメールを見る。
件名・ネバネバ
本文・納豆は、骨を丈夫にしてくれるから毎日食べるといいよ。僕は、メカブを一緒に混ぜるのが好きだ。ヒッキーちゃんは、何を乗せるのが好き?
この人の得意ジャンルがよくわからないのはいつものことだ。しかし、納豆とメカブとかネバネバ何十層なの。どんだけネバネバが好きなの。どんだけ自己再生液が必要なの。この人、もしかしてすごい怪我とかしてんだろうか。
「納豆に・・・うん、何も乗せない派だなあ。あぁ、でも、海苔の佃煮乗せたときはちょっと美味しかったかも。忘れたけど。」
ネバネバしてうまく動かない口をもちゃもちゃと動かしてメールにて投げかけられた質問に答える。さすがに盗聴器まではついていないらしくそのことに関するメールはこない。
私は、静かな部屋で一人納豆を食べている。もぐもぐと口をネバネバにしながら。
このメールをくれる人は、いったいどんな状況で納豆にメカブを乗せて食べるんだろうか。優しい家族に囲まれて口をネバネバにしながら、今日あったことを報告するんだろうか。
「・・・パジャマ、洗濯しようかな。」
食卓から見える窓の外を見ながら、私は納豆臭い息で呟いた。
ドアを開けると、秋とは思えないほど温かい空気と日光が肌に触れる。肩にかけるようにして洗濯物を持って家のすぐ脇にある物干し竿に向かう。少し湿らせた雑巾で竿を丁寧に拭いてそこに洗い終えたばかりの洗濯物を掛ける。柔軟剤の甘い香りが、気になる。少し入れすぎたかもしれない。どうにも未だに柔軟剤の適量がわからない。それに、匂いも慣れない。
「うう、臭い。臭い。」
ぱんぱんとしわを伸ばすように叩いて干す。こうしないとしわになる、と親に小学生のときに言われた。こうまで暖かければ、きっと今日中に乾くはずだ。
「うー・・本当にいい天気だなあ。」
うまく干し終えた、本日の傑作品を見つめながら伸びをして太陽に向けて目を閉じる。瞳に温かい光が当たってほんの少し痛い。
~♪
またやってきた無機質な音に、すぐに出ることをしないでしばらく何も考えないで太陽の光を浴びるように立っていた。
件名・ぱんぱん
本文・洗濯物がたくさん並んでいるとなんだか嬉しい気持ちになるよね。俺は、一軒家じゃないからそんな風には干せないから、ちょっと羨ましいなあ。
だからなんだ。というか、アパートとかマンションに住んでるんだ。知らなかった、いや、知りたくもないんだけど。そんな欲しくもなかった情報を獲得しながら、私は日光浴をしていた。ここは住宅地で周りには家やらアパートやらが建っている。けれど、どこの家も昼間は仕事やら学校やらで人がいる気配はない。そんな中で外に立っているとまるでこの平和な世界に私が一人だけ残されて何も知らないままに巨大な怪獣やミサイルが飛んでくるのを待っているようなそんな悲壮的な気分になる。
私は、ここにいますよ。まだ、ここにいますよ。
誰に言うでもなく心の中で叫ぶように吐き出して目を閉じたまま、お日様の光を浴びる。何をするわけでもない。ただ、怪獣が火を吹くのをじっと待っているだけだ。
少し風が出てきたのを感じて私はいそいそと家に戻ることにした。それに部屋の掃除もしなくちゃいけないから、こうしてずっと日向ぼっこをしているわけにはいかない。私は、こう見えてニートだけど忙しいのだ。パソコンの前に何時間もいる暇も、テレビでアニメをエンドレスで見る暇もない。家中の掃除に洗濯に夜ご飯の支度に明日の家族の弁当のおかずの下ごしらえ。その他もろもろをしなくてはならない、忙しいひきこもりなのだ。
「トイレ掃除は昨日したから、今日は窓拭きの日だ。あぁ、天気の良い日の窓拭きは本当に気持ちがいいね。これで明日、雨が降ったら本当に落ち込むけどね。」
誰にいう訳でもない私に言って私はさっさと掃除の準備を始めた。確信はないけれど、たぶんそろそろ次のメールが来るのだろう。
~♪
ほら、そうだと思った。私は、携帯を開いて今しがた着たばかりのメールを読んだ。
件名・掃除
本文・昨日がトイレ掃除の日だから、今日は窓拭きの日だね。天気の良い日に窓拭きするのは本当はあんまり良くないらしいけど。綺麗になるといいね。
何この人。腹立つんだけど。てっきり同じこと考えてるのかと思ってちょっと共感しかけた途端にこれですよ。知りたくないよ、そんな豆知識。聞いてないし、教えてほしいなんて言ってないし。にも関わらず、綺麗になるといいね。って何。喧嘩売ってるでしょ。腹立つ。
全く出鼻を挫かれたような気分で私は、掃除に取り掛かることになった。元々、そんなに掃除が好きな方ではない、いや寧ろ嫌いな私がこうやって毎日家の掃除しているだけでも褒めてほしいくらいなのに。いやいや、そんな愚痴を言ったところでニートでひきこもりである私には何の権限もないのだ。
「掃除だ。掃除、掃除しよう。」
自分に活を入れるように少し大きめの声で言って私は、空気の入れ替えをすべくリビングの窓を全開にした。
お昼ご飯が、楽しみなのは小学生までです。自分で準備するようになってからは、お昼なんてとても面倒なことこの上ない行事になった。にも関わらず、この行事、毎日一回は必ずやってくる恒例物で頻度は恐ろしく高い。ついこの間までは、冷凍食品やカップめんで済ませていたが、今やもうそれは見たくないくらい嫌いになった。そう、つまり飽きたのだ。そこで残り物を駆使して毎日のお昼ご飯を作るということを提案したものの、段々と面倒になってしまい、今に至る。
最近のブームは、うどんと焼きそばだ。この二つは大した物がなくても残り物を一緒に入れてしまえば、程よいマッチングを発揮する。百円ほどで売っている天カスを入れるのも有だ。
そんなわけで、私は今、天カスと今日のお弁当の下ごしらえで余った白菜、キャベツの入ったうどんを啜っている。中々の美味にテンションがちょっと上がっていると。
~♪
件名・うどん
本文・今日のお昼はまたうどん?好きだねえ。具は、何かな?白菜と、レタス?それって美味しい?俺のお昼はいつもと同じコンビニ弁当だよ。とほほ。
何が。何がどう、とほほなんだ。しかもレタスじゃないし、キャベツだし。どっから見てるのかわからないけど、ちょっと間違えちゃったね。しかも、いつもコンビニ弁当食ってるのなんて知らないよ。今日は、ずいぶんと新しい情報ばっかり寄越すなあ。いらないけど。
パタンと携帯を閉じてうどんを啜る作業に集中する。秋にしては良い天気な今日は、うどんではなく焼きそばにすればよかったな、なんて今更少し後悔した。
特に理由もなくニートになると、就職を探すのにもバイトを探すのにも、理由もなく苦労をする。
当たり前といえば、当たり前ではあるけれど、世の中の出来事の半分以上は特に理由もないことばかりなのになんとも残酷なことだと思う。
携帯電話に誰よりも多くのメモリーを占めるのは、親でも友人でもない。この一日に何十通と送られてくる謎のメールだ。送り主はいったい誰なのか、会ったことがある人なのか。それとも全く面識がない人なのか。いや、こちらが勝手にそう思っているだけで向こうは私のことをとてもよく存じているのだけど。
簡単に言ってしまえば、ストーカーなのだと思う。どこからか私の姿を監視して、面白くもないだろうにそれに対してコメントをメールで送ってくる。それから、夜には決まって九時に無言電話をかけてくる。私が切るまで相手も絶対に切りはしない。何を話すわけでもなく、ただ数分相手の呼吸や気配を感じるようにして受話器を耳に充てる。まるで自分を落ち着かせるようにただ黙って無言電話を無言で聞いている。それ以外は特になにもアクションを起さないので私も特になにも気にしていない。だけど、たぶん世間一般的に言うとやはりストーカーなのではないかと思う。
それでも、家に一人で篭っていて他に話し相手がいない私にとって毎日メールをくれるこの人・通称ストーキーさんは、外界との唯一の蜘蛛の糸のように思えて中々断ち切ることができなかった。
「ふぁあ、眠い。今日は、良い天気だから眠くなるな。お昼寝でもしようかなあ。」
お昼ご飯を食べ終えて食器を片付ける。だいぶ寒くなってきたが、真冬までは水で我慢する。お湯を出すと給湯代がかかるために節約をしなくてはならない。じんじんと脈打つように冷えていく指先に辛うじて救いがあるとするならば、一人分なため洗うものが少ないということだ。
~♪
件名・手荒れ
本文・冬が近づいてくると水仕事って手荒れするよね。俺は、ハンドクリームを塗ったりして対処してるけど。ヒッキーちゃんも何か対処しないと痛くなってからだと遅いよ。
どうでもいいけれど、私はこのストーキーさんにヒッキーちゃんと呼ばれている。私もストーキーさんのことをストーキーさんと呼んでいるから何を言えた義理ではないけど、でも、ストーカーならば自分のストーキングしている人物の名前くらいは覚えておいて然るべきだと思うのだけれど。それともやはりこの人はストーカーじゃないんだろうか。毎日何通もメールしてきて無言電話かけてくるぐらいじゃストーカーとは呼ばないんだろうか。だけど、だとしたらこの人、なんなんだろう。
「はあ、でも、ハンドクリームか。確かにそろそろ塗ったほうがいいかもなあ。酷くなる前に対処しておくとちょっと違うだろうし。」
薬箱に去年使い切らなかったハンドクリームが入っていたはずだから。それを使おうと、私は薬箱を棚の上から下ろすことにした。
真面目に就職活動をしたのですか?そう聞かれると困ってしまう。そもそも、この世界にそんなに真面目に就職活動をしている人間なんて何人もいないだろうに。たまたま運よく見初められて仕事に着けるだけの話だ。どんなに頑張ってもそれが結果に結びつかない人だっているのだから、真面目に就職活動をしていないから今ニートになっているわけではない。
「ああ、そうだ。DVDにダビングしなくちゃならない番組が溜まっているんだ。忘れてた。」
誰もいなくても回転する家の中を潤滑に回すべく私はいるのだ。誰かに褒められるわけでもないけれど、それでも私は毎日ちゃんと家事をしている。いったい、何のためなんだか。こんなことをするくらいなら仕事を見つけたほうが家族だって金が入ってきてありがたいだろうに。昼間から家に若い娘がいるよりも、夜遅くまで仕事をしている若い娘がいた方がご近所の評判だっていいだろうに。何の色気の話もない娘よりも、結婚を考えられるほど男がいる娘のほうが親戚の評判もいいだろうに。
わかってはいても、そうはうまく世の中は動いてくれない。
「・・・なに、してるんだろう。私ってば、いる意味あるのかな。」
こんなに良い天気で温かくて洗濯はきっと乾くだろう、良い日に私の心はしっとりと湿って、曇りだ。
私は、昼寝をするのが日課だ。元々体力がある方ではないので一日動いていると疲れてしまう。そのため、お昼を食べてしばらくしたらお昼寝をすることにしている。アザラシの形をした枕とお昼寝用のボロボロな毛布をリビングの日の光が当たる場所に置いて横になる。毎日寝ているため、この時間になると自動的に眠くなるようになっている。
~♪
件名・お昼寝。
本文・そろそろお昼寝の時間だね。俺もこんな良い天気にはお昼寝したいなあ。野原でレジャーシートを敷いてゴロリ。最高の贅沢だよねえ。
横になったタイミングでメールを寄越すとか、本当すごいわ。それにしても、確かに天気の良い日に野原でレジャーシートは最高の贅沢だな。もう、しばらくそんなことしてないけど。昔は家族で出かけたりしてよく行ったりしたのに。
「・・・この人は、いつ、誰と行ったのかな。」
メールの向こうにいる顔の見えないストーキーさんは、いったいいつの誰との思い出を思い出しているのだろうか。家族との幸せな思い出だろうか。それとも、恋人や友人との楽しい思い出だろうか。
「会ってみたい、なあ。」
この人はどんな人なんだろうか。どんな人たちに囲まれているのだろうか。どんな思い出を持っているのだろうか。閉じた携帯を握りしめて私はそっと目を閉じた。浅く薄い眠りの中で私は誰かとピクニックに行って日の光を浴びながら寝転んでいた。
一時間ちょうどにアラームが鳴った。その音でお昼寝から起きると、ちょっと空が曇ってきていた。私は、ぼんやりと夢の中との違和感を埋めようと横になったまま空を見つめていた。手の平の中で携帯が、スヌーズ機能を発揮してまたアラームを鳴らした。ずいぶんと前にダウンロードした今はとんと見かけなくなった芸能人の優しい声が、起きるようにと促している。
「ふあ、眠い。・・・あ!あぁ!洗濯物!!」
布団の中で伸びをして起き上がる。携帯のスヌーズ機能を停止させたところでそういえば、今日は洗濯物を干していたことに気づく。良い天気だったからたくさん干したんだ。まるでお昼寝前の私の心がそのまま具現化されたようなどんよりとした曇り空が泣き出さないうちに洗濯を入れてしまわなくては。私は、慌てて外に出た。
~♪
件名・雨が降ってきそうだよ。
本文・おはよう。お昼寝から覚めたかな?ヒッキーちゃんが眠っている間に空模様は、ご機嫌斜めになっちゃって雨が降りそうだよ。今朝干した洗濯物をそろそろ入れたほうがいいんじゃないかな?
今まさに入れています。ご忠告ありがとうございます。そう心の中で返信しながら、今朝作った傑作を落とさないように一つずつ外していく。薄い下着やジャージはもうほとんど乾いているが、この時期に多用するトレーナーやらはまだ湿気っぽい。家に入れて乾くだろうか。とも思うがこのまま干しておくわけにはいかない。早く入れてしまわなければ。
洗濯を入れながら、ふと思う。ストーキーさんは外の天気が悪くなっているのを見ていたのだろう。なら、もし、私が昼寝をしている間に雨が降ってきたらどうしたんだろうか。メールで知らせてくれたんだろうか。どうするのか、試してみたい気がして、けれどなぜかそれはしてはいけないことのように思えた。
私とストーキーさんの間には絶対に越えてはいけない領域がある。もしかしたら、私が勝手にそう思い込んでいるだけかもしれないが、あると私は思っている。
それは、私がメールを返信しないことだったり。それは、家族がいるときにメールを送ってこないことだったり。それは、私が無言電話以外でストーキーさんに対して何かアクションを起さないことだったり。それは、ストーキーさんが私の前に姿を現さないことだったり、する。
「あぁ、今朝までいい天気だったのに。どうしてこんなに急に曇ってきちゃったの。どうして、急に雨が降りそうになってきちゃったの。」
布団から急に出たせいか、それとも午後になって気温が下がってきたのか、微かに肌寒さを感じながら部屋の中にある物干しに乾ききっていない洗濯物を厳選して掛ける。
灯油代を節約しているため、家族が帰ってくるまでストーブは着けないがそれでも重ねて置いておくよりも僅かでも渇きがいいのではないだろうか。と、思う。
「はあ、寒い。寒い。」
まだ、少し温もりが残っている毛布に潜り込む。体を少しでもずらすと逃げてしまう頼りなげな温度が、悲しいようで愛おしい。私には、ちょうどいいんだ。
一度冷えてしまった体は、中々温まらずに眠りをもう一度引き込むことは出来ない。わかっていても、どうしても毛布を手放せずに顔を埋める。これは、ライナスの毛布だ。もう、小学生の頃からずっと使っているボロボロの毛布。どうしても捨てることのできない毛布。これは、ライナスの毛布だ。これは、私にとっての命綱だ。この世界と私を繋ぐ命綱だ。
この毛布を捨てる日、私の世界はきっと終わる。
夜ご飯の準備は、はっきり言って面倒だ。昼ごはんの準備よりも人数が多いし、何よりも手がかかる。それにも関わらず、あまりにも普段の生活に溶け込んでしまって別段注目すらされない。出てきて当たり前、食べれて当たり前、そんな当たり前、誰が決めたんでしょうか。
レシピ通りに作っても美味しかった験しがない。それは、私の腕前のせいか。それとも、レシピを作っている人の味覚がちょっとちょっとなのか。そこに関しては突っ込まないでおく。
~♪
ほら、きたよ。いったい、どこからどうやって見てるの。ていうか、そんなタイミングばっちりで仕事は大丈夫なの。
件名・お料理。
本文・今日の夕飯は、何かな?やっぱり、料理が作れる人っていいよね。俺は、自炊出来ないから憧れるよ。せいぜい、白米炊くのが限界かなあ。
あんだけ豆知識を有しているのに料理できないとか、何この人。毎日送ってくるメールの中にある知識利用すれば、たぶん白米炊く以外にも何かが出来ると思うのね。それとも、もしかしてその時々にパソコンでも使ってうまい具合にタイミングに合わせてちょうどいい豆知識を選抜してくれてるの。だったらやっぱりそのときに一緒にレシピサイトでも見ればいいと思うのね。そうしたら、たぶん白米以外のレパートリーも増えると思うのね。そう教えてあげたいけど、そんなことはしない。心の中でだけ思うだけ。いつも、そう。小さい頃から、私の人間関係はいつもそうだった。受信はするけど、送信はしない私と送信するけど、受信はしないストーキーさん。いったいどっちが、一人ぼっちなんだろう。
トントンと包丁を鳴らして野菜を切る。何も考えず、ただレシピの手順を考えながら手を動かす。愛情を込めれば料理は美味しくなる、なんて嘘だ。どんなに愛情を込めても、食べる相手が愛情を受け取らないなら、それは入っていないのと同じだ。どんなにスパイスを利かせても、その味がわからない人間にはわからないのと同じようにただの無駄遣いなのだ。だから私はずいぶんと前から、料理に隠し味を入れるのをやめた。食べる相手を考えて作っても、考えずに作っても結果が同じなら、その時間くらい無でありたいと思っても罰は当たらないだろう。
毎日、色々なことを考えて生きる人は恐らく生きているのが、楽しくて仕方がない人だと思う。小さい頃はそんな風に生きれていた気がするが、今は何かを考えていることが一番憂鬱だ。何も考えず、一日一日をただ眠るように消化していくのが一番楽だと私は思う。
トントン、トントン、包丁を動かしながら不意に過ぎる良くない衝動。この包丁を自分の腹に刺せば、こんな鬱蒼とした日々はあっという間に終わる。キラリと光るのは、一週間に一度の割合で丁寧に研いでいるから。この銀色の刃が、するりと私の弛みきった肉の中に入り込む感覚を想像した。ポタポタと流れる赤い血液が、不摂生のせいでドロドロだったら嫌だな、玉ねぎをたくさん食べると血液がさらさらになるらしい。よし、明日から玉ねぎたくさん食べよう。さらさら血液を目指すんだ。そう意味もなく決意して私はまた何もなかったように料理を再開する。私の頭はいつだってこうだ。
私の中に一つだけ決めていることがある。それは、自分では絶対に死なないということだ。どんなに生きているのが嫌で苦しくて鬱でも、私は自分で自分を殺してあげたりはしない。理由なんて特にない。だけど、ずいぶんと前からそう決めている。もし、死ねるなら他人の手でやってほしい。だから、今この瞬間、突然強盗が入ってきて私にナイフを突き出したとしたら、私にとっては願ったり叶ったりなのである。カモン・アウトロー!
だから、ストーキーさんも、きっとそうなのだ。
コトコトとなべが楽しそうな音を出しているのを聞きながら、私は暇を潰すために学生の頃に買った文庫本を読んでいた。もう、何度目かわからないくらい読んだ本ではあるが、今の私はお金がないため仕方ない。ほとんど暗記してしまった内容をそれでも一文字づつ目で追いながらわかってしまっている展開をなぞる。こうなるんだったら、学生のときにもっと本とか漫画を買っておくんだった。こうなるってわかっていたら、もっと買ってたのに。
「・・・この主人公、何度読んでも嫌いだわ。」
誰に言うでもなく読みながら呟く。どうしてこの本とっているんだろう、あぁ、でも数少ない本だから捨てるのもったいない。そんなことを思いながら、続きを読む。けど、やっぱり展開は覚えているから読むというよりは確認するに近いのだけど。
~♪
件名・読書
本文・今日も読書してるんだ。ヒッキーちゃんは本当に読書が好きなんだね。俺は、あんまり活字とか得意じゃないから本を真剣に読めるのが羨ましいよ。この前、ヒッキーちゃんを見習って本を数冊買ったけど、読んでるうちに寝ちゃったんだ。ダメだね。
この人、基本的にダメ人間だと思う。もう、何度目かわからない感想を思いながら私は携帯を閉じる。いや、ストーカーちっくなことしている時点でもうダメ人間なんだけど。それに加えて料理もできないし本も読めないって大丈夫なの?というか、活字が苦手ならあの豆知識いったいどこから持ってくるの。パソコンの文字は活字とカウントしないタイプなの?首を傾げたくなるメールに文字通り首を一つ傾げてみた。
自分でいうのもなんだけど、私はそうとう出来るニートなのではないか。と、最近は思っている。こうして私が毎日掃除をしているから、我が家はカビの繁殖がほとんどない。カビキラーなんて使わないよ。だって、手が荒れるからね。
「それに、あの匂いは臭くてなあ。しばらく咳も止まらなくなるし。絶対、あれはカビだけでなくて人もキラーしてしまうと思うんだよ。長い時間をかけてじりじりと殺す気がするんだよ。」
言いながら、晩御飯の準備ついでに流しを軽く洗う。毎日こまめに綺麗にしているから、大掃除のときだってそんなにしっかり時間を取られたりはしない。ほかの家ではドロドロが、とか言ってるだろうけど、うちは掃除よりもお節作りに時間をかけられるんですよ、奥さん。
いもしない奥さんに話しかけてみて、一人けけけと笑う。私は、案外こうして一人で会話するのが好きなのだと最近気が付いた。家族がいて少し遠くのショッピングモールに買い物に出かけられる土日も好きだけど、それはショッピングモールに行けるのが楽しいだけで帰ってきてしまえば、早く平日にならないかな。と、期待するようにリビングでテレビを見ている家族を見ている。
「・・・なんだろうなあ。なんだかなああ。」
ため息をついてぶくぶくと言い出したカレーを慌ててかき混ぜる。カレーは、ルーを入れてしまうと焦げ付きやすくなってしまうので注意が必要だ。
~♪
件名・カレー
本文・今日の晩御飯はカレーか。いいなあ、俺もよくレトルトを買うけど。やっぱり、ちゃんとした具の入ってるカレーが食べたくなるよ。ちなみに、俺はニンジンが好きだな。
「私は、にんじんが嫌いです。」
声高らかに宣言してカレーの火を止める。昼はコンビニ弁当で夜はレトルトのカレーとか典型的な自炊できない一人暮らしのメニューですね。この人、絶対一人暮らしだよ。そして部屋にはごみが天高く積みあがっているに違いないですよ。ええ、私が行ってきれいにしてカレーを作ってあげたいくらいだよ。
そこまで考えてあまりの突飛な親密的想像に自分でもゾッとした。いくら毎日メールをくれるだけのストーカーだからって、いや、ストーカーにそんなことをしてあげたいと思うなんてどうかしている。私は、私一人の王国で楽しく充実した毎日を送っている、そうだ。誰かの助けも誰かを助けることもしない。私の世界を構成するのは、私の部屋、そこから見える範囲の外。家族、小説、音楽。それから、それから、
「・・・・それから?それからって、何。それだけでしょ。それだけでしょ!!」
苛立つように叫んでしゃがみこんだ。言いようのない恐怖と不安がぐるぐるとお腹の辺りに渦巻いて血液を通って脳みそを飲み込もうとしている。どきどきと不快でしなかない動悸が、うるさい。うるさい。知らない、知らない。私は、何も知らない。
知りたくない。
夕飯の準備ができる頃、家族が帰ってくる。家族がいる間はストーキーさんはメールをまったく寄越さない。それはまるで私のためのようであり、ストーキーさん自身が警察に捕まらないためのようでもある。いや、たぶん、後者が正解でしょうけどね。
家族は、私に理解があるふりをしてただ単純に私に興味がないだけだ。私は、家族のためにご飯の支度をして、家族の今日一日の愚痴と自慢を長々と聞きながら、適度に相槌を打つ。私の話なんて誰も聞きたがらないし、聞かれても話すほどおもしろいことなんてないので相槌以外の言葉はほとんど発さない。傍から見たら楽しい食卓なんだろうな、なんて思いながらテーブルを囲む我が家はなんて滑稽な箱庭なんだろうか。
今日もいつも通り、家族全員が気持ちよくストレスを発散し終えて食べ終えたのを確認して食器の片づけを始める。前は食器洗いは母の分担であったのだけど、ある日手首をねんざしてきて湿布を貼っているからという理由で変わってあげてからは、ずっと私が洗っている。もう、湿布は貼っていないはずなのに、いつまでねんざしてんだよってはなしです。
「そういえば、お母さん移動になるかも。」
何もない。いつも通りの食事だったはずの今日。食後の甘いのと称される我が家恒例のご飯を食べた後にクッキーやらチョコやらを食べるひと時、母が不意にわざとらしく言った。
「あ、そう。」「へえ。」
興味のなさそうな男二人の返事に母が眉を寄せる。まずい、ここで機嫌を損ねると非常に面倒だ。口に入れようとしていたクッキーを机に置いて、話を聞く態勢を取る。
「どこに?なんで?いつから?」
「うん。新しくできた別な分室に。なんかね、そっちが人手不足なんだって。それで行ってほしいんだって。四月から、でも、さあ。」
まるで勿体ぶるように母は、言葉を切って俯く。男どもは、もぐもぐと口にクッキーを頬張りながら、ふうんと鼻息なのか相槌なのかわからない音を発す。
「よかったじゃん。」「ね。お母さんの仕事が認められたんじゃない。」
「違うよ。絶対、そういうんじゃないよ。単に今いるところが人余っているから回されたんでしょ。あーあ、行きたくないなあ。」
「いいじゃん。新しい職場でも活躍すれば。お母さん、どこでもうまくやっていけるよ。」
駄々をこねるように首を振る母をフォローするつもりで言った。途端に、いったい何の逆鱗に触れてしまったのか、母の顔が見る見る不機嫌になった。
「そんな簡単じゃないのよ。仕事してないあんたにはわからないでしょうけど、職場が変わるのは大変なの。だいたい十何年も務めてたのに、そんな急に言われても行きたいわけないでしょ。十何年よ、それなのに、いらないって言われたようなもんじゃない。本当に、もう、仕事やめてあんたみたいに家にいようかな。いっそその方が楽だろうし。そうしようかな。」
口に入れようとつまんでいたいたクッキ-がぼろりと指の間で砕けた。力を入れたつもりはなかったのに、指が白くなって爪が食い込んでいた。誰も見ていないから、静かに手を机の下に降ろして必死に力を抜く。まるで神経が石になったかのように、動きが重い。
「仕事、やめるの?」
ようやく絞り出した言葉は、僅かに震えていたような気がした。誰も気づいていないから、自分でそう思っただけかもしれない。
「それもありかなって思ってる。」
それから後は、よく覚えていない。何か話をした気がするけど、不自然に重い身体と鈍い思考が靄をかけたみたいに記憶を隠していた。ジンジンと頭の奥が痛んで吐き気がする。
『輝ちゃんは、言うことが性格悪い。はっきり言って腹黒だよ。』
昔言われた言葉が、頭の中を反芻する。なんでそうなってしまうのか。私は、誰のことを傷つけるつもりも、怒らせるつもりもないのに。どうしていつも、こうなってしまうのか。
他の人が、当たり前にできていることが私はいつもどうしてもできなかった。だからと言って他の人が出来ないことができるわけじゃない。できることもできないこともできない。そんな私が、いったい何をすればいいのだろうか。知らない。知らない。私は知らない。
今日もいつも通り九時に電話がきた。ちょうど、弟はお風呂に入っていて部屋には誰もいない。私は、ベッドの上に座って壁にもたれて光る液晶画面を見ていた。ストーキーさん。そう表示されている光る、画面を。いつもより鈍い動きで惹かれるようにそれを手に取った。
何も知らないだろうストーキーさんは、やっぱり無言で私もいつも通り無言でその電話を耳に当てて静かな気配だけを、感じるつもりだった。静かな部屋、電気を消した真っ黒な世界。ただ、黙って今日一日の心を落ち着かせる、はずだった。
「・・・・・聞いて、いますか・・?」
絞り出すように、声を出した。電話の向こうは相変わらず静かで何の音もしない。だけど、微かに息を飲んだ気配がするように思えた。
「私、は、・・・・私は、ずっと家にいて、ずっと一人でいて、何も考えずに生きて。そうしていれば、楽だったんです。何も、いらなくて、欲しくなくて、そんなふりをして。だけど、それで、楽だったんです。たとえ、それが生きて、いると、言えなくても。」
伝えたい訳じゃない。知ってほしいわけじゃない。これはただの我が儘でエゴで気まぐれで、思いつく限りの言い訳を並べて私は必死に声を絞り出す。
気づけば、涙が流れていた。
「私は、誰かを傷つけたくないって、でも、本当は私が傷つきたくなくて、怖くて。怒られたくな、くて。・・・・だから、ずっと、一人で。楽だ、って。思って、た。」
否定されるのが怖くて、拒絶されるのが怖くて、だから、一人だった。ずっと、ずっと、一人でいた。何か言われるのが怖くて何も言わなかった。私は、臆病な卑怯者だった。
そんなとき、あの人がメールをくれた。たった一人だった私に否定も拒絶もしない、一方通行の愛情を示した人が現れた。
「だけど、もう、違うかもしれない。お母さんが、仕事、やめたら。もう、一人でいられない。もう、一人で、あなたの、メールを読めない。私の、世界が、なくなって・・・私の世界が、壊れて、しまう。」
毎日、毎日、何をするでもなく何かを生産するでもない。他人にとっては無価値な毎日でも、私にとっては掛け替えのない毎日で。それを証明するようにストーキーさんは、メールをくれた。この人にとって私に言葉を投げている間は意味のある時間なんだと、そう思った。
私は、一人で幸せな世界に住んでいた。どこまでも、私は一方通行だった。
「・・・一人で、ずっと一人で。あなたのメールを読んで。自分と会話して、それが幸せだったのに。私は、もう、そうできない。できない、なら、もう、幸せじゃない。だから、」
感情のまま、脳が命じるまま、ただ言葉を吐き出した。ぐるぐると渦巻く吐き気に任せて私はただただ涙とともに言葉を、吐き出した。
「だから、私を、殺して・・・幸せじゃなくて、意味がなくなる、なら、いっそ、今を、今の、ままで、壊れてしまいたい・・・お願い、です。お願い、」
他人の心は他人には、わからない。私の心も、きっと誰にもわからない。何が幸せで何が不幸かなんてきっと誰かにはわからない。働いて社会貢献をすることが人間の幸せだと偉い人は言うけれど、私はその人の幸せはわからない。私の幸せは、そんなところにはない。誰だかもわからない社会に対してなんて何かをする気はない。
私の幸せは、絶対に私だけのものだ。
「・・・っ、」
電話の向こうで確かに音がした。それは、私が発している嗚咽ととてもよく似た音だった。何かを堪えるように低く静かな声だった。一方通行だった想いが、片道だけだった言葉が、返ってきたような気がして私はそっと耳に当てた電話を、切った。
夕べの電話の後から、不自然なくらいにストーキーさんからのメールが来なくなった。私は、とうとう越えてはいけない一線を越えてしまったのだろうか。そのことを考えるたびに心臓が不自然にドクドクと脈打つ。ひょっとしたら、ひょっとするのだろうか。ストーキーさんは、私の言葉を聞いて私を殺しに来るんだろうか。
いつものように朝ごはんを食べて、片づけをして。掃除を済ませて洗濯物を干すべく外に出た。昨日と同じくらいに良い天気。私は、太陽の光を浴びるように目を閉じた。ぽかぽかと体に満ちる、暖かい温度。
「ふあ、良い天気。あったかい。」
パサパサと一枚づつ風に靡くように洗濯物を干していく。綺麗に並べられるとやっぱりテンションが上がる。昨日まで来ていたお気に入りのパーカーを手に取った。
気配が、した。
根拠はない。外にいるから、いろいろな音がして足音なんて確信めいた物は聞こえない。それでも、私がまだ持っていた野生的な勘が間違いないと言っている。
私の背後に、あの人がいる。
気づかないふりをしてパーカーを軽くパンパンと叩いてハンガーにかけた。なんでもないふりをしようとしても、わずかに指先が手が震えている。これは歓喜なのか、恐怖なのか、その両方なのかもしれない。心臓が、破裂するのではないだろうかと思うほど痛く鳴る。昔、学芸会の出番を待つ埃臭い体育館の舞台袖を思い出した。後ろから、同じように緊張の息を吐く同級生の気配を感じたのと似て。
私の背後に、ストーキーさんが立っている。
「あぁ、なんて今日は、」
そのあとの言葉は思いつかなくて空を見つめながら目を閉じた。これは、私の望んだ未来なのかな。なんて、小説に出てきそうなフレーズが頭を巡った。例えば、今、この瞬間に生れ出た命があったとして、それは希望に満ちた愛の溢れる存在なのだろう。だからと言って私がそうではないのかと言えば、きっとそれは違うのだろう。私は、自分で昨日の夜のように何かを一歩踏み出せばこうして世界の流れは変わって昨日まで思っていなかった分岐点がやってくる。吐き出した思いを受け取って同じ思いを感じ取ってくれる人がいる。愛情も思いも初めは一方通行でも、いつかは相互通行になるのかもしれない。だとすれば、私は確かに誰がいるのかわからないこの社会を愛していたし、誰だかもわからないその社会に愛されていたのだ。
それがわかって今さら、とても満ち足りた気持ちになる。幸せを噛みしめるように微笑んで私は息を吐き出した。私は、今、とても幸せだ。絶対的に、幸せだ。
バッチリのタイミングでポケットに入れていた携帯が、なった。
~♪
背後のあの人が、動いた気がした。
きみとストーキング 霜月 風雅 @chalice
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