第2話 こわい。怖い。恐い。
私は昔から虫がこわい。
嫌いじゃなくてこわい。
虫といっても、虫全般がこわいという訳では無い。
虫の中でも幼虫がこわい。
小さい頃に見た夢の中で、幼虫に襲われた夢を見た。
それからは幼虫がこわい、見ただけで後ずさりしてしまう。
虫の中にも好きな虫はいる。それは蝶だ。
蝶の羽が好きだ。みんな同じように見えても、近くで見ると全然違う。そういうところが好き。でも、綺麗な蝶になる前は幼虫だったのだ。触ることは出来ない。蝶は悪くないのに。
虫はこわい。だけどもっとこわいものがある。
それはお父さんだ。
私の大好きなお母さんを、綺麗なお母さんを醜くした、お父さんが怖い。
私の知っているお父さんはとても優しかった。
私が作ったクッキーを「美味しい、美味しい。」と言いながら食べてくれた。
私の誕生日には、大きなティディベアをプレゼントしてくれた。
でも、私が変わってしまったから。
お父さんは変わってしまった。
私の知らないお父さんになってしまった。
お父さんは、私とお母さんを乱暴に扱った。
まるで、人形かのように。
私にくれたティディベアを私の目の前でバラバラにした。
最後には、家にあったお金を全て持って逃げた。
ある日、街でお父さんに似た人を見かけた。
小さな女の子を抱き抱えていた。
笑っていた。
私は心の底からお父さんを恨んだ、憎んだ。
お父さんは怖い。けど、それよりも恐いものがある。
それは自分。
変わってしまった自分。
天使だったはずの自分が、悪魔になった。
自分が恐い。
自分が嫌い。
自分がなんのために生まれてきたのか。
存在する理由をください。
金色の髪は天使。
黒色の髪は悪魔。
青色の目は穢れのない命。
赤色の目は穢れのある命。
この世界は汚れている。 たちばな ほたる @Karinkazami
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