男女の友情⑭
初恋の人とは、はて、誰であっただろうかと悩むときがある。
私としては幼年時に仲良くしていたアキラちゃん、彼女が初恋の人だと、ながらく認識していたのであるが、両親は言う「お前の初恋は幼稚園のミホ先生だった」と。当時の私はそのことを主張して譲らなかったそうである。
では私の初恋の人は二人の内のどちらかなのか。しかし、ようよう考えてみれば疑問がわいてくる。当時の私はさぞ利発なお子様だったはずであろうが、それでも男女の機微までをも理解していたかと問われると懐疑的だ。彼女らに抱いていた感情が恋愛感情であったかどうかは疑わしい。単純な親愛の情を、恋とはき違えていた可能性は高いだろう。となれば、私が異性に対するそれを初めて自覚したのは小学五年生のときの同級生、チエミちゃんである。私の初恋は彼女だということになるが、それもまた納得しかねる。彼女の場合、異性への好奇心という感情が強過ぎた気がするからだ。私は彼女に「女性」という偶像を重ね合わせて、勝手に崇拝していたフシがあった。彼女自身に恋をしたわけではないのだ。事実、今でも彼女のことはよく知らないままである。中学生二年生時のカエデさん相手なぞもっとひどく、あれはもう完全に下心である。当時の経験は、今でも強い羞恥と後悔を覚える私の負の歴史だ。初恋などと、甘酸っぱいイメージからは程遠いものであった。
ここまで考えてくると私はいつも、とある命題にゆきあたる。
そも恋愛感情とは、なんぞや?
それは特別な異性に感じる、親愛の情である。
しかし同性に対してそれを感じる者だっていよう。
更には特別ではない相手にそれを感じる者もいるはずだ。
人というものは好意に順位をつけられる生き物なのである。アキラちゃんだって言っていたではないか「あなたのことは七番目に好き」だと。私は、彼女の心の表彰台にも乗れぬような地位に甘んじるのを良しとせず、意固地にも涙を飲んだのであるが、人間は人によっては複数の異性へと恋心を抱くことさえ可能なのである。
それははたして本当に恋愛感情といえるのか?
友情を愛情とはき違えているのではないか?
そもそも友情と愛情は違うものなのか?
こうして私は思考の迷宮へと入り込み、這い出てくることあたわず。しっちゃかめっちゃかな頭で、いつもの結論に落ち着くのである。
愛情に勝る友情だって存在するはずである、場合によっては、それが尊ばれることだってあろう。友情だ愛情だと区別をつけることに意味はない。どちらも親愛の情である。「男女の友情」というものが成立してくれれば私はそれでいいのだ。
思考が錯綜し迷走を重ねたので、何が言いたいのかが伝わりにくかったかもしれない。よって最後に要点をまとめることにする。
――つまりは私の友人たちは皆、尊敬するに値する「特別な相手」なのである。
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