異世界から帰ってきました‼︎

プロローグ

  いつも夢に見るこの光景は一体なんなのだろう。

 

  遠くを見つめるとそこには立派なお城があり、街並みは中世のヨーロッパを彷彿とさせるような美しい外観をしている。

  周りを見渡すと、僕と同じ人間よりも目に入ってくるのが獣の見た目をした二足歩行の生物だ。

  わかりやすく例えるなら、狼のような顔をしていたり猫のような可愛い顔を持つ者さえもいた。

  彼らは人と同じ言語を使い、そのことに誰一人として違和感を持つものはいない。


  人間の中にも動物の耳が頭にあったり尻尾が生えていたりする。

 下を見ると僕の身長の半分にも満たない立派髭を蓄えた老人が、大きな荷物を担いでいた。


  街中に浮かんでいる小さい光に目をやると妖精のような生き物が至る所に点在し、空を見上げると、神話に出てくるような大きな体をした竜が青空を徘徊してる。


  まるでゲームの世界に入ってしまったかのような錯覚に陥る。


  ただ、驚くべき点はそこじゃない。

 

  今一番に驚いてる出来事は、まるで僕が世界を救った英雄かのような扱いを受けている点だ。


  厳重な警備の下パレードが始まる。


  先頭には楽隊を従え行進をするとともに音を奏で、その音と共鳴するかのように多くの見物人が盛り上がっていく。


  鎧を着た兵士が足並みを揃えながら前進していきながらとても長い列が出来る。


 兵士たちは立ち止まり、真ん中に空間を作り敬礼をし始める。

 ここからが本番とでも言いたげなような一瞬の静寂が辺りを包み込んだ。

 

  そして大きなトカゲのような生物が引く乗り物に乗った僕が門を潜り姿を現した瞬間、さっきの盛り上がりが嘘かのように沸き立ち最高潮に達した。


 手に握りしめた武器を高らかに上げ声援に応えていく。

 

 記憶には無いはずなのに、いやあるわけがないのにも関わらず、とても懐かしい気持ちがふつふつと湧いてくる。


「世界を救ったヒーローはずいぶんと人気だねぇ」


 背後から肩に手を回してきた男が話しかけてきた。

 

  黒髪に尖った耳、そして黒い洋装に身を包んでいて、とても美形な顔立ちをしている。


 名前も分からず、なんて返事をしていいのか考えている意思とは裏腹に体は勝手に返事をしていた。


「ブラントだって一緒に世界を救っただろ?」

 

 僕は少しニヤッと笑いながらブラントという男の顔を見ていた。


  「俺は何もしてねーよ。ちょっと戦闘に役立っただけだ」


「何謙遜してんのさ。あんなに頑張ってたのに」

 

「やめろやめろ、からかうな。俺はあんなに頑張るキャラじゃないんだよ」


  「でも先頭に立って相手に斬りかかっていくブラントはかっこ良かったな〜」

 

「やめろって…言ってるだろー!」


 僕がブラントをからかいながらじゃれ合っていると、後ろから一人の女性が会話に参加してきた。


  「確かにあの時のブラントさんはかっこ良かったです」


「カリーナもそう思うよな」


  「うん!」


  彼女の名はカリーナと言うらしい。


 ピンク色の長い髪に眼鏡をかけていてとても可愛らしい女の子だ。


  「カリーナのお墨付きだぞ。良かったなブラント」


  「だああああっ!カリーナお前もかー!!」


「本当にかっこ良かったですよ。いつものグータラでダメダメなブラントさんとは大違いでしたし」


 僕はその言葉を聞いて大笑いをする。


  「笑いすぎだ!!」


  ブラントはそう言葉にするも、しまいには自分も笑ってしまっていた。


 二人の笑った顔を見てカリーナも微笑んでいる。


 そしていつも夢はここで途切れてしまう。


 とても幸せで懐かしいあるはずのない記憶の中で僕は眠りから目を覚ますと、すぐに現実へと引き戻された。


 布団から出てカーテンを開け陽の光を浴び、時計を見ると朝の五時を指していた。

 大きく欠伸をしながらも走りやすい格好に着替えて、日課であるランニングをするため僕は家を飛び出した。

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異世界から帰ってきました‼︎ @miyabisan

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