異なる付属品

 茜は、鞄から今日中古で買ってきたゲームソフトの付属品を取り出す。そして、もともと自分が持っていた付属品と並べてみる。


 しばらく幸せそうにそれらを眺めていた彼女だったが、急に顔をしかめて独り言を言った。


「あれ……? 今日買ってきた付属品、ちょっと変……? 私が元々持ってた付属品と、ちょっとデザインが違う……」


 本や石、瓶、どの付属品をとってみても、少しずつデザインが異なっていた。二つを並べてみないとわからないくらいの、細かな違いではあるが、茜は首をかしげる。


「うーん、デザイン違いがあるなんて情報あったっけ。それとも、よく似せて作られた偽物? しかも、表紙の大事な飾りがなくなっちゃってるし」


 そんなことを呟きながら、彼女は買ってきた方の本の表紙を見つめる。表紙のメダルと、宝石のような物体が見事になくなってしまっている。彼女は、ページをめくる。すると本は、とある項目のページを開いて止まった。

 

「ん……? これは……。こんなページ、あったっけ……」


 ゲームをしていたころ、何度となく付属の本の内容を読んだ彼女である。大概の内容は記憶しているつもりだった。


 見慣れないページの内容をよく見ようと、茜は顔を近づける。すると、ページの分かれ目から、淡い光が少しずつ漏れ始める。初めは小さな規模だったが、その光の集まりは、どんどん広がっていく。


「え、何? ページに吸い込まれちゃう展開?」


 のんきに言いながら、茜は広がっていく光の行方を見守る。光はいつの間にか、ページ全体に広がっていた。その光が今一度大きく明滅したかと思うと、さらにまばゆい光を放つ。それと同時に茜の視界は一瞬、白に染まった。


 視界がもとに戻った時には、彼女は全く別の場所にいた。見慣れた家の風景ではない。そう、十年前の自分がゲームの中で見ていた風景が目の前に広がっていたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る