第7話 生徒会戦略会議

 二時間後、私は会議室にいた。ゴトンゴトンと列車の走る音が、会議室の緊張感を増幅していく。


「……で、こいつの肉を食うのは危ないと思うんですが! 意見を聞かせてください!」


 バンバンと机をたたく。生徒会戦略会議だ。戦闘系から文化系までの部活の部長が集まり、魔導学園列車の方針を相談する場として重要である。


 だが此度の議題は、「今回狩った獲物は食べられるか」である。重要な議題だ。

 私としては、腹に謎の紋様があるモンスターなんて、食料呪術衛生面として許可できないと思っている。けして、私だけ翼竜のガーリックステーキを食べられない恨みからではない!


 まず科学部部長が口を開いた。

「今解剖中だけど、普通のモンスターと変わらないよ。なぜかセロトニンが多いくらいで。だから食べても大丈夫だと思う」


 呪術部部長が追撃する。

「この紋様、モンスターの性能がアップするまじないかねぇ。これが、この呪いの大地の呪いかもよ。まぁ、紋様が消えたってことは死んで解呪されたってことだろうし、食っても安全だろうねぇ。一応にラットにモンスターの肉食わせたけど、変化なしだ。ちなみに紋様を使った呪いは紋様が刻まれた部分にのみ作用するんだ。モンスターの腹に刻まれていたってことは、呪い対象の臓器は胃腸、生殖部……」


 サブカル部部長が興奮して立ち上がった。

「生殖部に作用する紋様! なるほど! それって淫紋ってことでs……ぐはぁ!」


 サブカル部の彼はみんなが魔力たっぷりに投げた光弾により、ぼこぼこにされ机に沈んだ。……”いんもん”てなんだろう。よっぽど恐ろしい言葉らしい。

 ぷるぷる震えていると、隣の生徒会長がまとめに入った。


「……つまり紋様が消えたってことは解呪されてるわけだし、食べても大丈夫だってことだよ。翼竜のステーキは絶品だからね。士気も上がるし、食べよう」


 許可が出て、こころなしか皆からよだれを呑み込んだ音がする……。

 ちくせう、だが専門家たちがOKを出すなら仕方ない。私はギリギリ歯ぎしりしながら頷いた。


 よし、いい子だと、生徒会長が褒めるように私の頭をなでる。むぅ、いくつだと思われてるんだろう。


「じゃあ、第百六十二回生徒会戦術会議を終了s」

《鉄尾から、全校生徒へ――。》


 生徒会長が会議終了の文言を言いかけたとき、《鉄尾》から校内放送が入った。

 なんだなんだと耳をそばだてる私たちに、《鉄尾》は弾んだ声で言う。


《《アンソニー》を発見しました!》

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