第5話 ねこの駅長
先頭機関車にいくと、人間の姿の鉄道長がパリッとした制服を着てたたずんでいた。もう猫ではない。本部の方で解呪してもらったのだ(しこたま怒られたが)。
短髪の黒髪にすっきりしたシルエット。これで性格がよければ、引く手数多なのになぁ、といつも惜しい気持ちになる。鉄道長は私に気付いて振り向くと口を開いた。
「来たか、駅長に挨拶しに行くぞ」
「了解です」
通常、呪いの大地の結界のそばには、結界を維持している結界守――通称駅長がいる。結界は絶対安全ラインのようなもので、一度も破られたことが無い。なので、危なくなれば結界より外に逃げ出せば安全というわけだ。まさに結界様様である。
さて結界前、列車が停車した。
私は鉄道長と連れ立って、青白色した結界のすぐ傍にあるログハウスに入った。しかし、今回の駅長は――。
「ようこそ、特S級呪いの大地へ。駅長のねこですにゃ」
テーブルの上で香箱すわりしながらも、ぺこりと頭を下げたのは、まごうことなく猫だった。白猫だ。
鉄道長が困ったように頭を掻く。自分もこの間まで猫だったから気まずいのかもしれない。
「……私ら、こないだ猫になる呪いのかかったB級呪いの大地を浄伐したはずなんですが、もしや関係がありますか?」
ねこ駅長はニヤリと笑った。
「ねこは、昔その呪いの大地でねこにされましたにゃ」
「なら浄伐も済みましたし、本部に掛け合えば猫化も解いてもらえるはずでは……」
「あいにゃ、誤解しないでほしいのですにゃ。この姿は望んでなっているものなのですにゃ」
そ、そうだったのか……。私はごめんだが、それが趣味だとしたなら、私たちが口を出すことではない。鉄道長と顔を見合わせて二人で頷き合う。
「わかりました。とりあえず、私たちはこれから呪いの大地に突入します。今回は調査だけですが、五日経っても戻らなかったら本部に通報してください」
「はいにゃ。みなさんお気を付けて」
何でもないいつも通りの挨拶。
ログハウスを出て、《鉄尾》に乗り込む。さぁ、これからが本番だった。
魔力が車輪に集まり、少しずつ進んでいく。こうして私たちは、呪いの大地に侵入したのである。
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