第3話ぼくの願いが、ぼくの意志で。

 ――――もう、何度繰り返してきたんだろう。

 何十年、年百年、何千年。

 幾度、あと幾度、繰り返せば終わるだろう。

 ぼくたちは、満足の出来る結果を得ることが出来るのだろう。

 悲しい未来を、運命を変えることが出来るんだろう。

 同じ時間を繰り返して、果たして本当にそれで、変わるんだろうか。

 少しだけ、ほんの僅かだけ違う未来へ到達するだけなのではないだろうか。

 結局、本当になりたいようには、なれない。

 一番叶えたいことだけ、絶対に叶わない。

 きみと生きる時間だけ、どうしても手に入れられない。

 ぼくは、きみを護りたいだけなのに。

 この手は、きみには届かない。

 きみのことだけ、救い出せない。

 そうして、もう世界の何処にもいないきみのことを想って、涙を流す。

 ぼくの心の中にしかいない、大切な大切な人に生きていてほしいと思うのに。

 願いは叶わない。

 祈りは、届かない。

 ぼくはそうやって、またきみを失う。

 何度も何度も。

 幾度も幾度も。

 繰り返してきたことなのに、まだ諦められない。

 諦めたくない。

 あの優しい笑顔が、綺麗な心が、ぼくを救ってくれたのだから。

 今度はぼくが、きみを助けたい。

 必ず、護りきってみせるから。

 だから、待っていて。

 ぼくは、今度もきみを助けに行く。

 今度こそは、きみを護り抜く。

 ぼくの記憶の一番深いところに居るきみに、今、逢いに行く。

 これは運命なのだから、逢いたくて逢いたくて、ぼくはきみに逢いに行く。

 ちゃんと伝えたいことを、伝える為に。

 今のぼくは、ぜんぶきみの一部で形成されている。

 ぼくの心に、きみの魂の一部が残っている。




 きみに繋がる、唯一つの絲。

 それを辿って、必ずきみに辿り着く。

 この想いの真実を、きっとぼくはまだ知らない。

 その先にあるものなど、見たこともない。

 でも、だからこそ、ぼくは行くのだ。

 彷徨う想いの涯の地へ。

 引き寄せられるままに、行く。

 きみと生きる為の、この世の果てに。

 今度こそ、離れはしない。

 愛しい人のことを、放しはしない。

 きみの待っている約束の地。

 何処までも駆けて行って、一秒くらいで辿り着いてみせる。

 待っていて。

 きっと、もうすぐ。

 ・・・・・・もうすぐ。




 そして。

 猫はひとり、夜の星を見上げる。

 未だ見えざる歴史の果てに。

 舞い降りる光。

 其れは、聖女の願いだった。

 時を超える猫の瞳が映すのは?

 惨たらしい現実、或いは救いの。

 猫は知らない。

 最早、何一つ思い出さない。

 ただ、彼の地で待ち続ける。

 久遠の時を。

 紅き運命の星の下に生まれし少年の覚醒。

 蒼き宿命の星の下に生まれし者の来訪。

 七度目の時が動き出すのが、今・・・・・・。

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