02>はじめのものたち

  親愛なるきみへ


 花の精イウ・ヲンカから古い話を聞いたので、さっそく手紙に書こうと思う。こまごまとだけど、記録に役立ちますように。

 頭の精マナ・ウラのふたつの目、太陽と月。それらがめぐることであらわれた、はじめのものヲンヲたちのこと。


 ・かれらは、ひかりとやみとが、こすれあったところから“ムクムク”とあらわれた。(花の精イウ・ヲンカは両うでの輪を頭のうえにつくって、“ムクムク”をあらわしていたよ。)

 ・無邪気さと賢さ、それからちょうどよい、ほとんど、うつくしいといってよいほどの臆病さを、かれらは持っている。

 ・かれらは好いた木や花や草にみつき、ヲンカになる。(木や花や草がかみさまの建築物だという話は、すこし前にしたと思う。)

 ・かれらは、ひかりにもやみにも棲んでいる。

 ・かれらは、“とりかえっこ”を見るのが好き。

 ・それから、かれらが好むこと、心地よいと感じる日々のことは、わたしたちにもうつくしく映る。(“この場所ハ・ウラ”に暮らすものの、たいていがそうであることは幸福だ。)


 孵ったものクォ・トであるわたしたちには、ヲンカや“とりかえっこ”したものたちとの交わりがいちばん面白い。

 とくに、はじめのものたちが“とりかえっこ”に興味があるだなんて知らなかった。(それは恋のおはなしだから、だれでも赤くなって、めったに教えてくれない。)


 そろそろ書くところがなくなるので、これにておしまい。一枚じゃ、もの足りなかったかな。

 あしたから紙づくりをするから、できあがったら便りをします。それじゃあ、また。


  天戸テントのなかのクォ・トより

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