第40話 太陽系内地戦。その17

『遅くなり、申し訳ありません!』


 大きく、ハキハキした声はいきなり艦隊無線に割り込んでくる。

 あまりにもいきなり事でCICは一瞬ざわめき全員が一斉に現状を映しているディスプレイに注目する。


 ディスプレイにはワープ空間から出てくるふねが映されており、俺はその独特な紋章もんしょうを見て一瞬で第三艦隊が援軍に来た事を知った。


「キク⋯⋯、第三艦隊か!!」


「おぉ!」


 援軍の艦隊が第三艦隊と気付いたのは俺だけでは無いようで、きくの紋章が見えた瞬間その援軍の心強さに盛り上がる。


 第三艦隊は戦艦主体の戦争が始まる前から大出力の主砲を複数載せた大型戦艦に注目し、それの建造に力を入れていた勢力で、地球連合艦隊の大艦巨砲主義たいかんきょほうしゅぎ牽引けんいんした一大勢力。


「や、『やまと』じゃないか?あれ⋯⋯」


 そう言ってラノンは身震いしながらディスプレイに映る超弩級戦艦ちょうどきゅうせんかんゆびさす。


 次々とワープ空間から巨大な戦艦が出てくるのは圧巻あっかんで、今さっきまでの絶望的な雰囲気はもうCICには残っていなかった。


「『ながと』に『ふそう』、『むつ』まで!?」


 ラノンは出てくる戦艦一つ一つの名前を興奮しながら言って、ディスプレイに釘付けになる。


「少し艦隊が集結するのと、ワープを実行するのに手間取りました。申し訳ない。」


 無線からは色々と声が聞こえているが、正直皆全く耳に入っていなかった。


 第三艦隊の主戦力⋯⋯、第一戦艦部隊。『やまと』を旗艦きかんに『ながと』『むつ』『ふそう』『やましろ』の戦艦で構成されている部隊。

 特に旗艦である『やまと』は地球連合艦隊の中での高出力三連装レーザー砲を六門搭載し、『やまと』と言う名前以外に『化物艦モンスターシップ』という名でも呼ばれている本物のバケモノ。

 それ以外も太陽系内では最大級の戦艦で、恐らく現状太陽系内にいる艦隊の中で最強の戦艦部隊である。


「後は我々にお任せ下さい!既に敵ワープ補助艦3隻は我が艦隊の巡洋艦と高速駆逐艦が殲滅せんめつを完了しており、追加の敵もありません!」


 そう言って第三艦隊からの無線が切れると同時に、ディスプレイ越しでも眩しい程の閃光が光った。

 5隻の巨大な戦艦が単縦陣の陣形となり、一斉に敵艦隊へ主砲の一斉射撃いっせいしゃ

 いきなり現れた超弩級戦艦を先頭とする戦艦部隊に敵の回避運動は間に合わず、直撃する地球連合艦隊最高出力と最大級のレーザー砲の数々、一気に敵艦は爆散し、吹き飛んだ残骸が飛び散り周りの敵艦にもダメージを負わせる。

 レーザー砲がチャージされるとまたまばゆい閃光が光り、敵艦隊は次々と撃破されて行き、それをただ眺めているだけの俺は何となく悔しさを感じている様な気がした。


 気付けば戦艦を含む敵艦隊は撃滅され、残りは宇宙塵スペースデブリとなってただ、無重力の宇宙空間に漂っていた。


「終わった⋯⋯」


 そうペッパーさんは呟いた瞬間、CIC内の隊員は何かのリミッターが外れたかのに叫んで喜んだ!


「勝ったー!!」


 ラノンは奥で無重力空間を飛び回り、ダミオスさんは大きなガッツポーズをしていた。

 ペッパーさんは大泣きし、俺の隣の射撃担当班長は俺の肩を持って大喜びしていた。


 長く地獄のような戦闘も第三艦隊の登場で一瞬にして逆転し、後々『太陽系内地戦インテューサリルタベルカ』と言われる戦闘は終結した。



太陽系内地戦インテューサリルタベルカ

 ・第四艦隊防衛区間内で敵艦隊との戦闘が勃発し地球連合艦隊第四艦隊第8護衛隊含む防衛隊が出動。

 援軍である第三艦隊到着後、敵艦隊殲滅。


 敵艦隊の母星は現在調査中。


 ――第8護衛隊――

 旗艦:巡洋護衛艦『シュヴァルベ』⋯小破

 艦長:ハーマン・エーベルト中佐


 巡洋艦『アリアドネ』⋯大破

 巡洋艦『ルイーゼ』⋯船体破断

 巡洋艦『フライア』⋯大破

 巡洋艦『アドルフ』⋯中破

 駆逐艦『バータルート』⋯船体破断

 駆逐艦『エストワルト』⋯船体破断

 駆逐艦『バータ』⋯中破

 駆逐艦『ターニャウェル』⋯大破

 パトロール艦『P-4-L1』~『P-4-L8』

 3隻船体破断、以下中破


 ――他所属艦――

 パトロール艦『EP-203』『EP-29』『EP-345』1隻船体破断、中破

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 ――敵艦隊――

 戦艦4

 巡洋艦12

 駆逐艦7


 全艦殲滅


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