第26話 太陽系内地戦。その3

「本艦が行った敵戦艦『EB1』への主砲攻撃は攻撃評価『軽微』、再攻撃の用あり!」


「了解⋯⋯」


『地球連合艦隊』第四艦隊所属第8護衛隊、巡洋艦『シュヴァルべ』の砲雷長であるアドルフ・ヴェール宇宙軍少佐は圧倒的戦力差に頭を悩ませていた。


 そして艦長のハーマン・エーベルト宇宙軍中佐は艦隊指揮という重役を任されてガチガチに緊張していた。


 ハーマンは最近『シュヴァルべ』艦長に就任しゅうにんしたばかりで、それを期に少佐から中佐へ昇進した元通信艦の航海長だった。

 それが何故か精鋭第四艦隊の巡洋艦艦長。しかもその艦は第8護衛隊の旗艦きかん、ハーマンは何となくこの謎な昇進に心当たりはあるが、とても複雑な気持ちを持たざるを得なかった。


 その心当たりとは簡単に言えば『大活躍』なのだが、それはある紛争での現場処理⋯⋯つまり敵の撃破である。

 その時ハーマンは通信艦でとして仕事をまっとうし、帰ってきた時には何故か敵を撃破した英雄として勲章くんしょうを受けていた。

 正直に言ってハーマンは特に撃破に関わった訳では無いと思っていたが、その時の艦長が「艦員のお陰、特に航海長の判断が良かった」と評価した事により、この様な過大評価を受けてしまったのである。

 しかも勲章の授与じゅよを断る事が出来ず、そのまま第四艦隊の第8護衛隊旗艦シュヴァルべの艦長⋯⋯そして今にいたる。


「なんで⋯⋯」


 ハーマンは別に落ちこぼれという訳でも無いが、英雄なんて程の優秀な人間でも無いと自己評価しており、艦隊を指揮するなんて自分には向いていないと思っていた。

 艦隊指揮は確かに軍大である程度講義を受けていたが、実際の戦闘は講義で受けた様な生温い物では無く、イレギュラーの連続だった。

 まず戦艦が内太陽系にワープして来ること自体がイレギュラー中のイレギュラーである。


「艦長、再攻撃します!」


 砲雷長のアドルフはガチガチになっている艦長ハーマンに正直、本当にあの有名な英雄なのか?と疑問を持ちながらも敵戦艦への再攻撃を行う事を報告する。


「艦長?」


「あ、ああ。すまない⋯⋯、分かった。お、行え⋯⋯」


 アドルフはその覇気のない声を聞き少し不安になる。


「対艦戦闘!CIC指示の目標!主砲攻撃はじめ!」


「主砲撃ぃー方はじめ!!」


 CICに響く艦員達の声に少しびっくりしながらハーマンはどうこの事態を切り抜けるかだけをずっと考えていた。


 そしてイレギュラーがまたハーマンを襲う。


敵艦載機てきかんさいきと思われる飛翔体ひしょうたい5機、こちらに急速接近!」


「なっ、『アリアドネ』『ルイーゼ』『フライア』 は何してるんだ⋯⋯!?」


 アドルフがそう言って前にあるディスプレイに艦配列を映し出す。

『アリアドネ』『ルイーゼ』は中破『フライア』は小破。

完全に各個撃破かっこげきは対象になっている様で、特に中破の2せきは大量の艦載機をさばききれる程の戦闘力は既にうしなわれていると言っても過言では無いくらいのダメージを負っていた。


「⋯⋯艦長!これ以上『アリアドネ』と『ルイーゼ』はちません!この2隻は下げて⋯⋯」


「ならどの艦を上げるのだ⋯⋯?これを下げてはそれこそ保たん!」


 ハーマンはアドルフの言葉にイラッとくる。ただですらこの戦闘は無茶で戦力差は月とスッポン並に開いているのに⋯⋯

 いくら第8護衛隊が巡洋艦を多く持っている艦隊だとしても、敵は戦艦2隻、巡洋艦8隻、駆逐艦3隻の大艦隊。どう足掻あがいても戦力不足で当たり前に訳が無かった。

 それなのにまるで自分の采配さいはいミスのせいだと言わんばかりの⋯⋯

 イラッときた。


「⋯⋯艦載機、艦載機を持っている艦は無いのか⋯⋯?」


 ハーマンはディスプレイを素早くスクロールする。


「そうだ⋯⋯、艦載機には艦載機を当てれば良い」


 そう言ったハーマンは無線のボタンを押した。

 アドルフはその作戦にかなり疑問を感じたが正直やらないよりは⋯⋯、マシだった。


「艦載機を搭載している艦はすぐに艦載機を発艦させ、敵艦載機攻撃に対応せよ」


 全ての艦にその命令は無線によって伝えられる。

 そしてミノル達が乗る『EP-203』は艦載機搭載型のパトロール艦である事が、さらにミノル達の人生を変える事になる⋯⋯。


 ★ ★ ★


 どうも斑雪です!

 今回は若干長めの回でした!頑張りました⋯⋯遅くなったけど笑


 案外ハーマンお気に入りのキャラなのでこれからかなり出てくるかも⋯⋯笑


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