第24話 太陽系内地戦。その1

「メインエンジン停止、最大戦速を維持します」


「了解」


 再び無重力になったはずの身体は加速による慣性力を長く受けたせいかまだ押されている感覚が消えていない。


 俺は背もたれに引っ付いていた背中を離して計器をひと通り眺める。左後ろのラノンはポケーっとレーダーディスプレイを眺めていた。


「第四艦隊所属第8護衛隊、護衛艦『シュヴァルベ』よりEP-203へ。合流ランデブー準備、陣形は『単縦陣たんじゅうじん』艦隊後方からついてきてくれ。以上!」


 第四艦隊の護衛隊からの合流ランデブー要請。これは既に俺達が敵の近くに位置している事を表していた。


「EP-203、了解。目視で艦隊を確認。合流ランデブー用意よし!」


 また身体に慣性力を感じる。


「サブ点火。おもーかぁーじ、10度!」


 無線越しに航海長の声が聞こえる。


 少し身体が左に歪む。


「もどーせぇー」


 次は右に倒れた。


「ヨーソロ!速度そのまま!」


 また無重力に戻る。


「·····きっつ」


 久々に慣性力に振り回された身体が悲鳴を上げる。

 ラノンがポケーっとしている事が俺には理解出来なかった。ブランクがあるとは言え3年程度無重力状態の訓練を受けた俺ですらこの負荷はかなりキツいのにラノンは一切キツそうな顔をせずにレーダーディスプレイを眺めている。しかもポケーっとアホそうにだ⋯⋯


「あいつ⋯⋯脳まで筋肉になったか?」


 ラノンが日頃筋トレをしていたのは知っていた。今どき筋トレが日課って奴はかなり珍しいから覚えていたのだ。ただそんなに鍛えているイメージは無かったし、この負荷に耐えれるのは体幹がお化け過ぎる。


 俺は少し笑みがこぼれる、ラノンのアホづらは面白かった。


 だが、その笑みはすぐに消しさられる事になる。


「敵付近の空間エントロピー上昇!!⋯⋯ワープです!!」


「なっ、アレだけじゃ無いのか!?」


 空間エントロピー上昇⋯⋯、それは何かがワープして来る前兆みたいな物だ。無理矢理に三次元空間を捻じ曲げて穴を開ける、そのエネルギーが直接エントロピーを上昇させるのだ。


「戦艦一隻でもキツイってのに⋯⋯」


 思わず砲雷長のペッパーさんが愚痴を言う。


「さらにエントロピー上昇!!これは⋯⋯、ヤバいですよ。」


 CIC内は騒然としていた。


「こちら『シュヴァルベ』、敵付近のエントロピー上昇は感知してるか?」


 シュヴァルべからの無線。向こうもかなり戸惑ってる、そう確信させられる声だった。


「EP-203、エントロピー上昇を感知。ワープと思われるが⋯⋯陣形を変更するか?オーバー」


「シュヴァルべ了解。陣形、速度の変更はせず。繰り返す⋯⋯陣形速度の変更はしない。オーバー」


「EP-203了解」


 するとレーダー担当の人が右奥で叫んだ。


「ワープ確認!⋯⋯戦艦バトルシップ1、巡洋艦クルザー多数!まだ増えます!!」


 戦艦追加に巡洋艦の嵐、正直絶望的だ。


「敵さんも本気だな⋯⋯」


 ペッパーさんが失笑しながら言う。


「笑ってられんぞ⋯⋯砲雷長」


 ダミオスさんが目を細めた。

 ペッパーさんはそれを見て少し息を飲む。


「艦長⋯⋯、配置つけます」


 戦闘配置。完全に戦闘に入った事を意味する号令で、砲雷長から艦全体に戦闘用意を指示する。

 戦闘配置になれば艦のコントロールは完全に艦長の許可を得た砲雷長の命令に従う形になる。


「了解」


 ダミオスさんは腕を組んだ。


 するとペッパーさんが無線のボタンを押す。


「対艦戦闘よーい!!」


 ピーンピーンピーンと言う機械音と共にペッパーさんの声が全員に復唱される。


「対艦戦闘よーい!!」


 ついに⋯⋯ついに来てしまった。

 そうグッと力を手に込めて、俺はラノンの方を見ると、相変わらずラノンはポケーっとしていた。

 ★ ★ ★


 どうも斑雪です。

 とてつもなく投稿が遅れました。本当に申し訳ないです⋯⋯

 このお話を待って頂いている方(いらっしゃるかは分かりませんが⋯⋯)には本当に申し訳ないです。


 最近リアルの方が謎に忙しくなってきており、私もそろそろ死にそうです笑

 これからもかなり投稿が遅れたり、逆に訳が分からないくらい早くそしてグチャグチャな文章になったままお話を投稿するかもしれません笑

 その点を指摘、助言頂いても全く構いませんので、これからもこの初心者の駄文をどうぞよろしくお願い致します。

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