第22話 発艦。 その2

「ここがミノル君とラノン君の持ち場だ。」


 そう言って俺たちを戦闘指揮所CICに連れてきたペッパーさんは何か冗談を言っていると俺は思った。


「えっ?ここCICですよね·····」


 戦闘指揮所CICは名前の通り戦闘を指揮する所である。

 12平米程度の空間に様々な機器やディスプレイが置かれており、中央後方には砲雷長ほうらいちょうと艦長の席がある。


「ミノル君は主砲しゅほう、ラノン君は後方レーダー支援。」


 ペッパーさんは指でその役の席を指す。


「えっ?いや·····」


 俺はもっと混乱した。パトロール艦に主砲は1つしかない、つまり俺が射撃の全責任を負うという事??

 いや、アホだろ。アホだ。ポンコツだ。

 ここには射撃管制すら出来るやつが居ないのか??

 無理。絶対無理!!


「大丈夫だよミノル君。射撃管制は砲雷長である僕がやる。ミノル君は僕に言われた通りにすればいい。」


 俺の心を読んだかのようにペッパーさんは俺に説明した。


 てか、そんなの分かってる。問題は·····


 俺がそう言おうとしたがペッパーさんはもうラノンに説明を始めていた。


 えぇ·····


「ラノン君はレーダーを見てて欲しい、特に後ろ!!」


 ペッパーさんにそう言われるとラノンは深くうなずいた。


 俺もその仕事がいい·····


 そんな事を思っていると後ろのドアがスッと開いてダミオスさんが入ってきた。


「ダミオス大尉、ミノル君とラノン君に説明終わりました!」


 ペッパーさんはビシッと敬礼する。


 無重力空間なのによくあんな速く敬礼出来るよなぁ。


「·····無理を言ってすまん。」


 俺がボーッと現実逃避をしているとダミオスさんからいきなり謝られた。


「え、いや。そんな·····、もう大丈夫です。」


 俺はダミオスさんがいきなり頭を下げたのに驚いて大丈夫とか言ってしまった。


 大丈夫じゃないのに·····


「ラノンもすまんな·····」


「大丈夫っすよ。」


 ラノンはニヤッとする。多分ダミオスさんが頭を下げたのが珍しいからだろう。

 お気楽な奴だ。アホだろ·····


「·····それでは準備出来たか?」


 ダミオスさんは大きく息を吸って前のペッパーさんを見る。


「はいっ!発艦準備、整いました!」


 ペッパーさんが大声と共にまた大きく敬礼する。


「よし·····。」


 ダミオスさんは少し目をつぶって息を大きく吸う。そして艦内無線のボタンを押し込んだ。


「諸君·····これから行くのは戦地だ。訓練とは違いバーチャルでは無い。我々は人数も少なく艦も小さい。しかし、諸君の心、護りたいと言う心は大きいと信じている。敵を倒す。ここは太陽系、我々人類が太陽光のもと生きていた偉大なる恒星系である!ここは俺達の場所だ!!敵さんにはこの太陽系からご退場願おう!!」


 場が張り詰めた。沈黙と言うには短いかも知れないが、確かにその瞬間、俺は·····いや、俺達は心を一つにした。


「さぁ、発艦だ·····」


 ★ ★ ★


どうも斑雪です。さてやっとです·····。お待たせしました。


ちなみに、このお話では艦内全て無重力空間という設定です。

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