太陽系内地戦。

第21話 発艦。その1

「おっお、おぉ!」


 ラノンは自分の足が浮くのを感じたのか、慌ててエレベーターの端っこに掴まった。


「大丈夫かラノン·····」


 俺もエレベーターの手すりに掴まる。


「お、おお、多分大丈夫だ」


 ラノンはこっちを見て少し笑う。


「ついたぞ」


 ダミオスさんはそう言って扉の開いたエレベーターから外へスーッと出ていく。


「あ、はい」


 俺とラノンは慌てて進みたい方向と逆に力をやると、身体が何の抵抗も無く進み続ける。


 その様子を見ながらダミオスさんは足を踏み込み、前に勢いよく進んでこっちを見る。


「おい、急げ」


 無邪気に無重力を感じている俺たちにダミオスさんは若干キレ気味で俺たちをかして奥の方に進む。


「あ、すいません·····」


 俺たちはそう謝ってダミオスさんの後を必死に追いかける。


 すると奥の方でペッパーさんが見えてきて、その奥に大きなふねが見れてきた。


「パトロール艦だ·····」


 俺は久々に見たそのふねに少し懐かしい気持ちを感じる。


「ダミオス大尉たいいすでに発艦準備は整っております。すぐに発艦命令を·····」


 ペッパーさんはそう言ってダミオスさんに艦橋かんきょうを指さした。


「ああ、分かった。アイツらに持ち場を教えてやってくれ」


 そう言ってダミオスさんは艦橋へ勢いよく向かって行った。


 ペッパーさんはビシッと敬礼して、その後こっちを見て俺たちの近くにスーッと近づき、ピタリと俺たちの前で止まった。


「あのー。名前を聞いてもいいかな?」


そうして少し不器用な笑顔で目を合わせ、首をかしげた。


「ああ、俺がミノルで·····」


「ラノンです。」


「ミノル君とラノン君ね·····」


 ペッパーさんはチラッと艦の方を見てまたすぐにこっちを見た。


「今回はダミオス大尉がこの艦の艦長だ。普通、大尉が艦長をする事なんてほぼ無いけど今回は特別·····、君達も今回はダミオス大尉が全責任を取られるらしい。手伝ってくれる君達にはホントに感謝してるけど、絶対無茶はしないでくれ」


 ペッパーさんはそう言って俺たちを艦に迎え入れてくれた。


「ミノル君·····、きみはラノン君に比べて無重力に慣れている様だけど、何かしていたのかい?」


 ペッパーさんがそっと俺に近づいてくる。


「え?いや·····、そうですか?」


 俺は反射的に軍大の事を隠した。目立ちたく無い、という気持ちもあったが、本音は少し違った。

 ペッパーさんは階級章を見るに3等軍曹、恐らく幹部候補生では無く『叩き上げ』だろう。

 正直『叩き上げ』の人からしたら軍大に居たという事実にあまり良い印象を持たない、そう反射的に思ったのだ。


「へぇー、凄いね。軍人に向いてるんじゃないかい?」


 ペッパーさんが気楽に話しかけてくれているのは俺が緊張していると思っているからだろうか·····そんなに俺は固まっているのか·····。戦闘が怖い·····。そんな事を思ったのは人生で初めてだった。


 ★ ★ ★


 どうも斑雪です!とてつもないくらい遅れてしまい申し訳ないです。


 発艦とか言いながらまだ発艦しませんでした笑

 次こそは発艦するぞ!


【『叩き上げ』】

 軍にはもちろん階級という物が存在します。

 所謂いわゆる、一等兵やら軍曹、大佐などの事です。このお話に出てくる宇宙軍という組織も階級制で、階級が絶対となっています。

 この軍内地位で尉官から(少尉以上)は幹部(士官)と呼ばれ、その階級になれた人は出世コース(警察で言うキャリアコース)を歩むのです。

 ここで幹部(士官)には二通りの成り方があり、まずは一番下の階級から軍へ入隊し、下からのし上がってくる『叩き上げ』組。そして、士官学校アナポリスや軍大学に入って、卒業と同時に軍へ入隊、そのまま幹部候補生として1年間の訓練を受けてすぐに幹部(士官)となる『軍大卒』組。と二種類存在します。


 ここで、何故『軍大卒』が『叩き上げ』から忌み嫌われるかと言うと、若くして幹部へなれる『軍大卒』ですが、『叩き上げ』は死ぬ程の戦闘経験と訓練を受けて歳を取りながらやっと幹部になれるといった差があるからでしょう。

 もちろん『軍大卒』の人間も4年間でかなりの仕打ちを受ける訳ですが、それを理解する『叩き上げ』の人間は少ない·····という訳です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る