第20話 はじまり。その8

 俺はダミオスさんに連れられるがままパトロール艦へ向かっていた。


「おい、ラノン!」


 俺はどうしてもラノンに言っておきたい事がある。


「なんだよ?」


 ラノンは俺とダミオスさんの後ろにピッタリついてきていて、こっちを面倒くさそうに見る。


「ホントにいいのか??家族はどうすんだよ!」


 俺の言葉にラノンは若干顔をくもらせた。


「俺はまだしも、お前はダメだ!」


 俺もダメなんだけど·····

 とっくに諦め始めてた筈の気持ちが少し芽生える。


「なんも訓練されてない。そんな人間が乗って生きて帰って来れると思うか??」


 ラノンは少し下を見て


「いいんだよ·····」


 そう一言だけ言った。


「なっ·····」


 俺が見た事の無いラノンの顔がそこにはあった。


「エレベーター乗るぞ」


 ダミオスさんに言われて俺達はエレベーターに乗り込む。


「こ、これ·····」


 そのエレベーターにはボタンが2つしかない。それは『中心』と『下』。

 この宇宙ステーションは重力を居住空間をグルグル回す事で作り出している。

 もちろんここは宇宙ステーションなので様々な宇宙船が来る訳で、それらはクルクル回る中心部へ接続ドッキングされる。その中には宇宙軍のふねもあって、軍関係だけはその中心部も分けられている。

 そしてこのエレベーターは軍用。もう完全に軍人としてこれに乗らないといけない。


「さて、諦めがついただろ?」


 ダミオスさんはニヤつきながらこっちを見て、俺の手を放した。


「もういいです。1回だけですよ·····」


 もうどうとでもなれ俺は考える事を止めた時エレベーターが動くのを感じた。


 エレベーターはどんどんと中心へ進み、少しづつ身体が軽くなる。


 そして、俺は6年ぶりに無重力を体験した。


 ★ ★ ★


どうも斑雪です。無重力体験してみたい·····


【人口重力】

物が回転した時の遠心力を利用した、見かけの力の事。


遠心力···物体とともに回転しているものから見た時に現れる慣性力みかけのちから

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