第8話 記憶。 その3

 ラノン・パウロは困惑していた。あの怖い上司が泣いている。

 しかも、アホな同期に「軍の方がむいてる」なんて言い出す。


 ラノンは自分がどんな顔をしているか想像もつかない程、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。


 ★ ★ ★


「ダミオスさん。俺は軍には·····」


 俺はダミオスさんの言ってる事を一切理解出来なかった。


「分かってる。お父上はとても残念だった。俺もお世話になったし、お前の気持ちも痛い程分かる。だが、軍に入るのがお前の為だ。」


「な、なぜ、父の事を·····」


 驚いている俺の肩をダミオスさんは強く握り締める。


「お前はこんな所で腐って良い人間じゃ無いんだよ!!なんの為の4年間だったんだよ!!俺は知ってるぞ!!お前はパータァ中佐を継ぐべきだ!!」


 言葉が上手く出ない。ダミオスさんからこんな事を言われた事無いし、父の事は知らないと思っていた。

 確かに、俺が軍大学を辞めたのは父が死んだ影響が大きい。まあ、他にも有るのだが。


「パータァ中佐はお前が軍に入ると思ってたし、喜んでたぞ!!こんな所で腐ってどうするんだ!お前の居場所は、もっと他にある。オレはそう信じてるし、パータァ中佐もそれを望んでる筈だ。」


 何も言えなかった。確かに父は俺の軍大学進学を喜んでいた。跡継ぎだ、なんて言われた事もあった。俺もこの生活に少し罪悪感たるものがあるには有る。

 だが・・・俺は決めたのだ、軍には入らない。戦争のせいで父が死んだ後、母も弟も死んだ。そんな戦争をしている軍に俺は絶望したし、その勉強と訓練をしている自分にも悪寒を感じた。


「ダミオスさん·····」


 口を開いた俺にダミオスさんがハッと目を向ける。


「俺は軍に入りません。いや、入れません。そんな資格、俺にはありません。人を護れるとも思いません。」


 沈黙がその場を支配した、そしてその沈黙が俺の口を達者にさせる。


「俺は戦争で父を·····母を·····弟をも亡くしました。そんな戦争をやっている軍人に俺はなりたく無いし、なれもしない。軍人になっちまえば、守護まもれなかった母に、弟に顔向け出来ない。父が部下を護れなかった様に、俺も人を護れない軍人になっちまう。そんな奴には絶対なりたくない。」


 その後、沈黙は続いた。

 気付いたら目から涙が溢れていた。ひたすらに。ただ、ひたすらに。


 ★ ★ ★


 どうも斑雪です。


 どうですか皆さん。お盆、楽しめましたか?


 私は台風に吹き飛ばされました^^


 まあ、それはさて置き。物語も暗い描写が続き、病んできました。


 小説を上手くかける人はホントに凄いと思います!!

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