第7話 記憶。 その2

「おい、今日の外出ちょっと付き合え。」


 制服をプレスしていた俺にダミオス部屋長が言った。


「は?俺ですか?」


 俺はプレスを止めて自分に指を向ける。


「ああ。」


 ダミオス部屋長はそれだけ言って部屋から出ていった。


 ★ ★ ★


「遅い。」


 ダミオス部屋長は腕を組みながら俺を睨んだ。


「すいません。点検で足止め喰らいまして·····」


「はぁ、もう一学年も終わると言うのに、まだ外出点検で引っ掛かるのか?」


 ダミオス部屋長は大きく溜息を吐き歩き出した。


「いや、完璧だった筈なんすけど·····」


「完璧じゃ無いから引っ掛かるんだよ。アホか貴様。」


 怒られてしまった。


「あのー、ダミオス部屋長。」


 説教が始まる前に話を変えなくてはやばい。そう思った。


「なんだ?」


「何処に行かれるのですか?」


 適当な回避!!これに限る。


「はぁ?飯に決まってんだろ。付き合え。」


「ええっ!俺まだ未成年ッスよ!!」


 俺は慌てふためいた。あの厳しいダミオス部屋長が俺に犯罪を犯させるなんて·····


「は?そんくらい分かっとる呑むのは俺だけだ、貴様は飯を食え。今日は奢ってやるさ。」


「あ、そうですよね。」


 俺の思い違いだったみたい。でも奢りはラッキー。

 何だか前を歩いているダミオス部屋長の足取りが軽い気がした。


 ★ ★ ★


 アイツは軍大学入学時1番頭が良かった。体力も、筋力もある訳ではなかった。金も無く実家は裕福じゃ無いらしい、でも優しかった。万人ばんにんに優しかった。その優しさが俺には眩しかった。

 誰も見捨てず、助けた。俺には出来なかった事をやってものけた。


 俺はそんなアイツにかれたのかもしれない。


「ダミオスさん、ここです。」


「ああ。」


 ラノンがアイツのアパートをよく知っているらしく、マップを見なくても直ぐ着いた。


 アイツはなんで軍に行かなかったのか、その理由は知ってる、分かってる。でも、俺はそれがどうしても信じられ無かったし・・・悔しかった。


「おい!」


 俺はドアを叩いた。


「早く出てこい!!いつまで休んでんだ!!無断欠勤だぞ!!寝てんのか!!起きんか!!懲罰ものだぞ!!はよ起きんか!!サボるのもいい加減にしろ!!ぶちのめすぞ!!」


 ★ ★ ★


 なんの音だろう·····

 ガンガン聞こえる·····

 何かを叩く音·····

 怒鳴り声も·····


 微睡まどろみの中に俺はいた。夢を見ていた。その名残が少しだけ、ある・・・。


 何かを叩く音と怒鳴り声で起きた。


「·····い!!はよ·····か!!!」


 朦朧もうろうとしていた意識がこの声を聞いて一瞬でめる。


「ダミオス部屋長?」


 気づいたら懐かしい呼び方をしていた。俺は何を言っているんだ·····


 ダミオスさんの声は初め何を言っているのか分からなかったが、頭が晴れていくにつれハッキリとした言語が聞こえる。


「おい!!早く出てこんかぁ!!」


 寒気がした。懐かしいあの怒号。


「やばい。」


 今出たら殺される。そんな気がしてならなかった。


「おーい!!早く出てこいよー!!ダミオスさんブチ切れてるぞー!」


 ラノンの声もする。いや、ここで出たら死ぬ。やばい。居留守いるす使うか。


「おい!!!居るのは分かってんだ!!はよ出てこんかぁ!!こんのぉ」


 ガゴンという音をドアがたてる。


「は?アホだろあの人。セキュリティロボ来ちゃうよ!!」


 気づいたら俺はドアの方へ走っていた、開けたら死ぬのは分かってる。でも、セキュリティロボがきて警察の世話になるのはもっと御免だ。


「分かりました!!開けます、あけますから!」


 俺は目をつむりながら勢いよくドアを引いた。


「おい·····何故会社へ来ない。」


 目を開いた俺は少し戸惑うことになる。

 ダミオスさんが泣いているのだ。


「え、え?えぇ。ダミオスさんどうして·····?」


 ラノンもポカーンと口を開けて腑抜ふぬけている。

 いや·····、なんで泣いてるのダミオスさん。


「ダミオスさん?」


 するといきなりダミオスさんは俺の胸ぐらを掴んで一言言った。


「お前にはやはり軍が向いている。」


 ★ ★ ★


 どうも斑雪です。お盆ですね。


 投稿ペース落ちてしまい申し訳ない。


 さて、物語もノロノロと進んでるわけですが、途中で今どの様な時代なのかという説明回(閑話)が入ると思います。


なんも構成考えてないとやばいですね( ˊᵕˋ ;)

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