第4話 異変。

「艦長ー」


 ディスプレイの端に表示される光点を睨み続けていたラング・ホーン宇宙軍大佐はハンナ・マリノフ宇宙軍中尉の声が聞こえていなかった。


「ラング艦長!!」


 ラング大佐の意識が現実うつつへと戻る。


「あ、すまん。」


「艦長·····、これはいったい。」


 ハンナ中尉の不安がにじみ出ていた。

 いつもは冷静で気の強い女性なのだが、今はこの光点に冷静さをいている様だ。


 ディスプレイに謎の光点が映りだしたのはついさっきの事で距離はおよそ4天文単位AU(1AUが約1.5億km)、光時差タイムラグは33分程。

 つまり、現在ラング大佐達が見ているこの光点は33分前のものである。


「艦橋よりCIC、光学照準は距離が遠すぎて行えず。現在、火器管制FC系レーダーの照射を準備しています。」


「応答は?」


「ありません。」


「だよね、まだ届いてもないからね。」


 この巡洋艦の艦長であるラング大佐はいくつか実戦経験のある男で、そのおかげかレーダーディスプレイに光点が表示された瞬間に多周波による通信とFC系レーダー照射準備を行わせた。


「これは、敵さんなのかね。」


 それはラング大佐の思考がまとめられた一言だった。


「艦長、敵とは·····」


 この艦の砲雷長であるリオーカ・テグン宇宙軍少佐はラング大佐の一言が気になっていた。


「ん?いや、こちらに近付いている。これって敵なのかなって思っただけだ。」


 ラング大佐は少しテレッとした感じで真剣なリオーカ少佐の質問に答える。


「艦長、まずは近くにいる第六艦隊へ合流しましょう。」


 リオーカ少佐の言いたい事はラング大佐に充分伝わった。不審な物から早く遠ざかりたい、そんな気持ちなのだろう。

 ラング大佐は部下達のゾワゾワした不安を感じた。


「うーん。レーダー、動きは?」


 ラングは少し迷った。合流か、それとも·····


不明点アンノウン、真っ直ぐ等速でこちらへ向かっています。速度およそ18.5 km/s 、第三宇宙速度を超えています。」


 レーダー担当のカリスト・ホリアン宇宙軍少尉は変人と言われている艦長に現状を伝える。


「第三!?速いな·····もう一度確認する、等速か?」


「はい。等速です。厳密には等速直線運動です·····」


「うーん普通、敵に向かうなら加速しながら、なおかつ弾道回避のためにジグザグで向かってくるもんじゃないかねぇ⋯⋯」


 ラング大佐は背もたれにもたれかかりながら手元にある無線のボタンを押した。


「CICから艦橋へ、こちら艦長ラング航海長グリア、進路変更指示だ。速度そのまま、取舵、90度。」


「は、取舵ですか?不明点アンノウンに向かわれるおつもりで?」


 航海長のグリア・ドリトン宇宙軍少佐は艦長の抑揚のない撥音はつおんにも驚いたが、正直イカれた命令だと思う。


「ああ、なんか引っかかる。俺のカンだよ。」


 ラング大佐のカンはよく当たると有名で、しかも悪い事ばかりだ。


「りょ、了解。速度そのまま、とぉーりかーじ、90度っ!」


 ふねは大きく左に回頭かいとうした。


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「で?いつからだ、この光点が現れたのは。」


 演習航宙えんしゅうこうかい中であった第七艦隊の旗艦きかん戦艦せんかんグレート・ジョージアの戦闘指揮所CICはレーダーディスプレイにいきなり現れた光点に騒然そうぜんとしていた。


「ついさっきです」


 レーダー担当のバンス・トルーマン宇宙軍少尉はレーダーの各機器を一つ一つ確認しながら答えた。


「距離と速度は?」


 艦隊司令であるフィリップ・ソーヤー宇宙軍中将は椅子に浅く座り直す。


「距離、4AU。速度、18.5km/sです。」


 各機器の確認が終わりバンス少尉が後ろを振り返った。


「ん?速いな。」


 いつも鉄人仮面の様なフィリップ中将が少し驚いた顔をした。


「艦長、演習か何かあったか?」


 フィリップ中将は隣に居るジェームズ・シモンズ宇宙軍少将(グレート・ジョージア艦長)に確認する。


「いえ、私は何も・・・司令は何もお聞きになってないのですか?」


 ジェームズ少将は司令の態様に少しぎょっとした。むしろフィリップ中将の悪戯いたずらかと疑う位であった。


「うむ·····前方の高速駆逐艦と巡洋艦に偵察へ向かわせる。通信士、打電!」


 フィリップ中将は帽子の上から無線用イヤホンを付け、手元にある無線のボタンを強く押し込んだ。


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 どうも斑雪です。


 多くの方が自主企画へ参加して頂きとても感謝しております!!


 また、この小説もかなり見てくれる方が多くなり私もとてもノリノリで文章を書いております!!

 自主企画へ参加頂いた方の小説を読ませて頂いてますが、文章力の差に自らの拙さが痛感出来るほどで、自主企画して良かったなーと思います!!


 これからも頑張っていく所存でありますので、よろしくお願いします!!


 追記、。。。への指摘をして頂いた方、とても感謝しております!!修正させて頂きました!


天文単位AU


 1AU、正確には149597870700 m 。2014年3月に「国際単位系 (SI) 単位と併用される非 SI 単位」(SI併用単位)に位置づけられた。主に天文学で用いられる事が多く、地球と太陽の距離の近似値はおよそ1AUである。



 ☆少し説明会☆


 この作品ではレーダーの電波を光の速度と同じ、つまり現代のレーダーと同じ原理にしているので、レーダーディスプレイに映るものは距離に応じて誤差が生まれます。

 我々が見ている太陽が8分前の太陽と言うのと同じ原理です。


 なので距離が遠ければ遠い程、物体の表示位置はズレています。


 また、宇宙ではレーダー波を遮るものが無いので無限遠方までレーダー波が飛んで行ってしまいます。そうするとディスプレイを無限に伸ばさないといけないと言う訳の分からないことになるので、途中で割愛しているようです。

 また、今回の光点もその割愛部分ギリギリから見えるようになったのでいきなり現れた訳です。(つまり本当はずっと近ずいて来てました。)


 画面端から見えてくる文字見たいですね。(下に分かりやすいように★を用意しました。画面でお試しください。)




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