第3話 太陽。その3
「机磨き終わったか?」
ダミオスさんの声にビクッとする俺。
ラノンのせいで変な事を思い出してしまったからか死にかけてないのに走馬灯の様にあの大学校での記憶が甦る。
死にかけてないのに·····いや、今から死ぬよってか?
「は、はい。なんでしょうか·····」
緊張で少し声が裏返った。
「お、終わってんな·····まあ、いいや。そこ座れ」
とてつもないくらいの
あの鬼畜ラノンはダミオスさんが俺に話しかけた途端トイレとか言って跡形もなく消え去った。立つ鳥跡を濁さず。裏切られた。死ぬのか?ヤバくない?そんな事しか考えられない。
「お前、この会社無くなった後の事考えてるか?」
いきなりだった。
まさかの解雇。ブラックにもクビがあるのか?
「いや、今すぐって訳では無い。だがこの会社、太陽の監視が仕事だろ·····もうそれも終わる」
「太陽はあの寄生物のせいでそろそろ核融合に必要な燃料が尽きちまうらしい。まあ、前々から分かってたからな。この会社も終わりって訳だ」
沈黙。いつもうるさいダミオスさんもこの時はとても静かだった。
「んで、どうせお前なんも考えて無いだろ?この会社が無くなったらまた職なしに戻るのか?」
「は、はぁ。まあ、なんも考えてないです。え? 会社無くなるの決定なんですか?」
「ああ、さっきも言ったが今すぐって訳では無い、でももう俺達は用無しさ」
「え、なら·····」
全く実感が湧かなかった。会社が無くなる、それはいくらブラックとは言え俺の生活の根幹を支えている会社の給料、それが無くなるって事だ。
「まあ、なんも考えてないよな」
ダミオスさんも少し申し訳なさそうに下を向いた。
確かにこの会社。ブラックである。でもこの人から誘われた人生初の会社。同期であるラノンとはこの会社の愚痴を言ったりもしたが楽しんでた。
このブラックを。
楽しんでたのだ。
頭がおかしいと言われるかもしれないが、楽しかった。俺はそんな
「まあ、俺がお前を会社に誘った訳だ、だから責任があるだろ?」
そう言ってダミオスさんは1つの書類を俺の前に出した。
【宇宙軍志願兵募集要項】
身震いがした。宇宙軍。その単語だけで。
「分かってる。だがな、お前にはここがむいてる」
冗談じゃない。
「俺の知り合いが戦艦の艦長してるんだが、そいつに頼んでお前をねじ込んでもらう」
「えっ·····」
「もう一度言う。お前にはここがむいてる。俺がそう思ってる」
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その夜は眠れなかった。いつもの事であるが、違う理由で。
「宇宙軍かぁ·····」
ダミオスさんから貰った書類を俺はパラパラーっとめくった。
【宇宙軍志願兵募集要項】
「志願·····1からか··········」
複雑な気持ちだった。
軍大学に受かり、そのまま行けばエリートコースだった。
でも、辞めた。
そうなればそんな経歴は無くなる、むしろ裏切り者だ。
志願兵、1から、あのキツイ基本教練を次は軍学校で。
想像するだけで身震いがした。
色々思い出したくない記憶が宇宙軍を
「はっ、ありえないよ。確かにあの時は。でも、もう俺には出来ない」
枕を顔の上に被せた。眠れる様に、すぐさま忘れられる様に。
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また、寝坊した。
しかも3時間。
会社、行かなくていいや。
もう忘れたい。
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つづきます。
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