はじまり。
第1話 太陽。その1
太陽。
太陽系の物理的中心であり、太陽系の象徴であったもの。
地球には数々の神話があったらしいが、そのほぼ全てに太陽を
☆惑星に生命が誕生するための三大条件☆
・エネルギー
・液体である物質
・有機化合物
地球にこの全てが揃ったのも太陽(エネルギー源)のお陰である。
だが、その太陽の命が今無くなろうとしている。
我が子の手によって・・・
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夢を見た。
美しい夢だった。
緑色の草原に透明な水が流れる川、奥には木々が生い茂る。ふと空を見上げると青空に真っ白で綿のような雲が漂っていた。
風を身体で感じて、川のせせらぎが聴こえる。小鳥が飛び交い美しい音色を僕に聞かせてきた。
太陽の光が眩しく草原、雲、木々を照らし、僕はその太陽の眩しい光を手で覆うのだった。
俺はそこで目覚めて
そして気付くのだ。
「ち、遅刻だ⋯⋯」
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「遅いよ」
俺の仕事先であるE3SS(地球軌道第3宇宙ステーション)太陽状態監視所は結構ブラックだ。
先輩や上司は優しいのだが、出勤時間がほかの一般的な会社の3時間は早く、そのクセ帰るのも遅い。(もちろん給料も少ない。)
しかも建物内にある飲み物の自動販売機にはエイリアンと言う経口エナジー補給液がある始末だ。
そのせいで俺は夜まともに寝れてない、その睡眠不足が
「これで何回目だい?」
上司のダミオスは大きなため息を吐く。
「す、すいません⋯⋯」
俺はダミオスさんから目を逸らす。
「今日の言い訳タイムだ。さあ、どんな物語を聞かせてくれるんだい?」
ダミオスさんは俺の目線に無理矢理入ってくる。
「えーっと⋯⋯⋯あっ、会社のバッチが少し汚れていて、ピカールで拭いてまして⋯⋯なかなか汚れがとれなくて⋯⋯お酢を付けて取ろうとしたら、お酢が無くて⋯⋯買いに行ってました。」
俺は少し真面目そうに顔をあげた。
「ピカール?」
「あ、ご存知ありませんか?金属磨き用の研磨剤でして──」
「は?」
「よく学生時代に使っておりまして⋯⋯」
「ここ、軍大学じゃないんだけど⋯⋯」
「へ?」
「だから、ここ軍大学じゃないんだけど!!!」
ダミオスさんがキレた。いや、分かってたけど⋯⋯
「何回目だ!ぴ、ピカールだと?そんなに磨きたいなら磨かせてやる!そこの机全部磨いとけ!!」
「机は金属じゃないですけど⋯⋯」
「机、ピカール不備っ!!以上、復唱ぉ!」
「あ、机ピカール不備っ!!」
「今すぐ磨いてこい!!」
ダミオスさんの迫力に負けて、すぐお掃除ロボットの加勢に俺は走った。
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「お前バカだろ⋯⋯」
同期のラノンが呆れ果てて苦笑する。
「しょうがないじゃないか」
俺はおちょくりに来たラノンに雑巾をむける。
「ホントにここがブラックなだけだよ·····そのせいで全然寝れないし、寝坊して当たり前だろ?」
「バカだろ。いや、ホントにバカだな。お前頭良いのに、頭悪いな」
「はぁ?哲学かよ。ダミオスさんでもそんなこと言わないぞ」
「言っとけ、これはお前の頭の悪さが招いた結果だよ。アラームセットしなかったのかよ」
「眠かったんだよ!!」
「あー、ほらバカだろ」
「いや、まあ、いや⋯⋯」
何も言えない俺にラノンは溜息をついて、こっちにペン先をむけた。
「そもそも、最近ダミオスさん機嫌悪いだろ」
「まあ、そうだけど⋯⋯」
「事情が事情だからなぁー」
ラノンの言ってる事情とは太陽の事である。もちろん太陽とは地球が居る太陽系の真ん中にあるデカい恒星の事だが、それの寿命がそろそろって話なのだ。
「ダミオスさん、太陽大好きだからな⋯⋯いくら分かっていた事とはいえ、耐え難いのかね⋯⋯」
ダミオスさん。俺の上司なのだが、この人は俺の上司だけでなく大学の先輩でもあるのだ。
てか、ダミオスさんの誘いで俺はここに就職した訳で⋯⋯それが、こんなブラックだなんて⋯⋯
まあ、そんな事おいといてダミオスさんは太陽が大好きだった。この頃では珍しい太陽オタクってやつで、太陽の周りをグルッとグルグルっと巻いてあるダイソン環たるエネルギー吸収装置にすらブチ切れていた。
『太陽の周りにあんな、あんな⋯⋯あんなものを寄生させておいて。我々の母なる星だぞ!!』
なんて叫んでいた事もある。
まあ、まとめるとダミオスさんは太陽大好きオタク兼、俺の大学の先輩兼、会社の上司兼な訳である。
俺はそんな人に付き従っていた学生時代が懐かしく思いながら雑巾をまた机に擦り付けた。
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どうも斑雪です。
まーた、遅くなっちゃいました。
今回からプロローグは終わり。本編へと物語は突き進んで行きます!!
まだまだ、小説がへったいど素人なので、気になる点がありましたらどうぞお申し付け下さい!!
難しい言葉や専門的な話が出てきた時に用語説明をこの場所でしたいと思います。
今回は1つ。
【ダイソン環・ダイソン球】
恒星を卵の殻のように覆ってしまう人工構造物。恒星の発生するエネルギーを利用可能とする宇宙コロニー、発電所の究極の姿と言える。名前はアメリカの宇宙物理学者、フリーマン・ダイソンが提唱した。
☆高度に発達した宇宙文明☆
第一段階 一つの惑星上で得られる全エネルギーを利用する文明
第二段階 一つの恒星系で得られる全エネルギーを利用する文明
第三段階 一つの銀河で得られる全エネルギーを利用する文明
21世紀初頭、現在の地球文明は第一段階にも達しておらず、ダイソン環建設は第二段階に至る、第三段階では銀河系内すべての恒星がダイソン環で覆われる事になると言う。
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