地図にない基地 #2
「そう長居して君達の邪魔をするつもりはないよ」
私は強面の曹長に笑顔を浮かべてみせたが、相手は睨みつけるような視線で微動だにしない。これは会話がしづらいなと思いつつも本題に入る。
「行方不明の特殊部隊員2名の手がかりはその後どうかな?」
この質問に対して曹長は「いえ、全く」と表情を変えることなく即答する。
彼は私への警戒を解いていない。
私がこの基地に来たのは2名の兵士が行方不明になったから……特にこの2人がベテランの狙撃手と観測手のコンビであり、中南米地域における数々の破壊工作や危険人物の排除において活躍した人物でありながら、この2人が基地に配属後数日で行方不明になったためである。
特にこの基地はそれ以前にも兵士が行方不明になった後、死亡した報告がアメリカ本国に何度もされていること。さらにそれが基地の調査目的で送り込まれた海兵隊員に限って発生しているのだ。
もちろん、基地の調査目的で送り込まれた海兵隊員全てが行方不明・死亡したわけではないが、彼らがアメリカ本国に帰国する予定が基地の極秘性から全く分からない状態となっているので、今回の行方不明事件は基地の調査とは別件のモノだったものの、それまでの前例からこの基地の調査を一般の海兵隊員ではなく、一定の階級を有する部外者の海軍士官が現地の調査・報告を受けた後、その日のうちに帰国するというプランが立案されたのである。
「あの、曹長。急に来たうえにすぐ帰るとはいえ、私も手ぶらで帰るわけにはいかないのだ。せめて当時の状況なりを教えてくれないか」
私のその言葉にさらに厳しい目つきになる曹長。
「ここはカリブ海の最前線とも呼べる基地なのです。ですので海兵隊上層部でも限られた者でしかこの基地の詳細を知ることは許されていません」
その担当者が他のお偉方にすら詳細を語らないうえに行方不明者が続出するものだから、海軍の私が上官命令で来るまでになったというのに…
「彼らの行方不明後に侵入者を捕らえていますが、ご覧になりますか?」
不意の発言に驚くこちらへ「この基地は絶えず脅威にさらされているのです」と、曹長は険しい顔のまま語った。
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