地図にない基地
「お待たせしました、大尉殿」
その声にクレイグ・ベドローシアンが振り返ると、強面の兵士がこちらに敬礼していた。こちらも椅子から立ち上がり敬礼する。彼は確かアール・ボネリ曹長だったか。
私は今、カリブ海洋上の小島にいる。そのアメリカ海兵隊基地の中だ。とはいっても、この基地はキューバなどのアメリカ合衆国の脅威になりうる国々を監視するべく極秘裏に建設された基地なので、表向きは「地図にない基地」という扱いだ。なので、ここには米軍基地など無いことになっているし、仮にここで殉職すると親族には別の場所で死んだという報告がなされる。
そんな基地に来た私の案内役として紹介されたのが、この強面の曹長である。
彼からは最初に会った時から敵意のような視線を感じていたが、この基地の特性上部外者が警戒されるのも当然だろう。私はアメリカ海軍大尉なのだから。
まず、アメリカ軍には陸海空それぞれの軍が存在する。それらは国防長官をトップとする統合参謀本部により管理されアメリカ軍を形作っている。また、各軍には様々な名称の組織が存在しその中には予備役的な州兵もあるが、海軍直轄の組織に沿岸警備隊や海兵隊がある。
特に海兵隊は特殊な組織で海軍直轄の組織ではあるものの、海外での活動が前提で陸海空全ての兵器を独自に保有する。そのため、海兵隊自体が一国の軍隊として機能することから、独自に航空機や艦船を大量に保有する沿岸警備隊も含めてアメリカ5軍と呼ばれる。
この組織でありながら一国の軍隊レベルの戦力を保有し、海外で活動するというエリート意識と戦死した仲間であっても見捨てないという海兵隊教育に、「地図にない基地」という極秘性が合わさって、この基地は私という海軍士官を部外者扱いしているのだろう。
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