第5話 人は見かけによらず

彼を人間不信にさせたのは

街で店主をしていると名乗る

裏で繋がっている 引き渡し屋だった


彼はまだ錯覚が上手く使えず

目をつけられていた

コロコロ服装が変わってしまったのだ


それを目撃され 後をつけられて

気づかなかった彼は不意打ちをくらった

恐ろしい 彼と私のような「バケモノ」よりも

バケモノの眼をしていたそうだ

だから 街に出てる時 彼は密かに

神経を張りつめていた

私の眼はそれを「感知」したのだ


街から路地裏へ戻ると彼は

張り詰めた糸をゆるめ 震え出す

毎回 頑張っているのが目に見えてわかる

きっとこの路地裏も最初からここに

居たのではなく 移住して生命を

繋いでいたのだろうと私は考えた


錯覚は試すしかなくて

私は眼のアビリティだから

もしかしたら眼球を取られるかもしれない

そんな恐怖に掻き立てられる

時に悪夢まで見る有様だ 情けない

まだ出会ったことも見たこともないのに


私は仲間探しをしてみたいと

ふと好奇心を持った 彼にはもちろん内緒だ

反対されることがわかっているから


「ねぇ ここの世界とは別で

私たちのような人の世界はないの?」


気になって聞いてみた

彼は答えた


「少なくとも見たこともないな

もしかしたらあるかもしれないけど

街でその話があれば狩られるだろう」


確かにそうだと思った

街にバケモノの世界があると出回れば

彼を捕まえたような人達は

捕まえるまで諦めないのだから


「酷く残酷な世界

どうせなら貴重な存在がよかった」


夢のまた夢だ

明日はなにか起こるだろか

不安しか残らない路地裏暮らし

今日が終わることがこんなにも怖い


「「おやすみなさい」」

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