第4話 人間不信

彼や私のように アビリティを持つ人は

実験材料にされる事例が少なくない


もともとアビリティを持つものが

少ないから事例も少ないのだろう

眼を隠す工夫をしなければならない

同士の他に信じていいものは「ない」


彼の錯覚は隠しようがないため

本人の努力でしかないが 私は眼


前髪を伸ばすことにした

目が悪くなると彼から心配されたけど

大丈夫と答えた


私は髪を伸ばし さらっとした長い黒髪で

彼はとても褒めてくれた

私は誕生日からまだ1年も経っていない

身長は彼よりは低いが

そこらの人よりかは高い方だった


前髪を伸ばすと 大変だった

街へ出るとみんな恐れるのだ

彼に申し訳ないと思った 「ごめんなさい」



前髪の他に 出来ることは

なにかあるだろうか 1人悩み続け

用のない時に眼が働かないように

訓練を密かに始めた 彼の隣で


街で過ごすことで生きることができる

だが欠点がある 彼は経験していた

いい人に見えても いい人はいないと

現実は甘くないのだと

彼は1度 捕まっている 路地裏に帰ると

震え出す彼 慰めることも出来ず

そばにいてあげることしかできない


「人間は恐ろしい」

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