chapter2. 1
「これで半分終わり、っと……」
あちらこちらに本の山が積み上がった部屋で、座って壁に凭れ掛かりながらここまでの成果を確認する。
左右の壁いっぱいに並べられた本棚。
右側にはシリーズ、ジャンル毎に分けられた文庫本が綺麗に収められている。
その反対、左側の棚には疎らにしか収まっていない。それと言うのも今が片付けの真っ最中だからだった。
ここは学校の図書室……ではなく、半ば書庫と化している僕の部屋だ。
本好きな両親の影響を漏れなく受けた僕は、順調に本の虫として育った。
小さい頃に読み聞かせてもらっていたいくつもの絵本、入学祝に買ってもらった図鑑、お小遣いで集めたお気に入りのシリーズの文庫。
手当たり次第に集めた様々なジャンルの本が、今では部屋の壁を埋め尽くす程いっぱいになっていた。
物語を集めるコヨミちゃんを手伝うと決め、実際に『桃太郎』の世界に入ってから僕なりに思うところがあって、今まで読んできた有名なお話をもう一度ちゃんと読み返そうと思い、どうせならごちゃ混ぜ状態になっている家の本棚も整理しようと思い立って今に至る。
「次はあの山をサイズ毎に分けて、新しいものは纏めて、上の段には何を置こうかな」
休憩しながら本の並べ方を考えつつ、隣の山に目をやると、とあるタイトルに引き寄せられた。
『イソップ物語』と『グリム童話』。イソップ物語はギリシャ人のイソップが書いたとされる寓話集で、うさぎとかめ、アリとキリギリス、すっぱい葡萄、金の斧、北風と太陽、王様の耳はロバの耳など、有名なお話がいくつもある。
グリム童話はグリム兄弟がドイツの各地から集めた昔話を纏めたもので、こちらもブレーメンの音楽隊、赤ずきん、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテルなど、長く読み継がれる作品ばかりだ。
うちにあるのは子供向けに出版された本なだけあって、文字が大きく振り仮名も振ってあり、所々に挿し絵も描いてある。
この二冊は文字を覚えた頃にプレゼントしてもらったもので、一人でも読めるのが嬉しくて、毎日夢中になって読んでいた。
その頃の気持ちを思い出して懐かしくなり、パラパラと捲っていく。
「これは好きでよく読んでたなぁ。あれ、こっちはどんなお話だったっけ。朧気には覚えているんだけど……」
一度読んだ事があるとは言え、単純に忘れてしまったものや、布団の中で広げていて肝心の結末は夢の中、なんてものもあるのだろう。
部屋の片付けには先程目処が付いた事だし、少しくらい休憩を延ばしても問題なさそうだ。
例えばそう、この中のお話を五つだけ読んだらまた始める、というのもいいかもしれない。
そう考えた僕は、少し迷った後に『グリム童話』を手に取り、ゆっくりとページを捲り始めた。
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