第8話 おやすみ

 衝撃的な光景だった。

 モルン達は血を流して、一匹残らず死んでいたのだ。

 そして死体の海の真ん中に立っていたのは、綺麗な長い白髪を風になびかせる少女。

「おいおい、どういうことだ」

「私は人造人間七百五番、与えられた名はリム」

「お前もあのミラってやつと同じ類か」

「そうかもしれませんね、あんな出来損ないとは訳が違いますが」

「出来損ない、か」

 そう放った言葉が、俺の遺言になるとは思いもしなかった。

 詠唱なしに放たれた魔法は、俺の心臓を的確に狙って打ち抜いたのだ。

「……っ」


 ヒューズは地面に倒れこんだ。

「ヒューズ、ヒューズ! 」

 リアの声に、彼は答えない。

 いや、答えることができないと言った方がいいのだろうか。

「あなたは不死身であることを知っています、だから私はここで手を引きます」

 言葉にならない悲しみと、怒りを。

 リアは手に込めて放つ。

「究極電撃魔法!! 」

 叫ぶようにして詠唱された魔法は、なぜか発動しない。

「な、なんで……なんでなの」

「私の役割は達成されました、帰還します」

 彼女は空間交換魔法を発動させ、その場から姿を消す。

 リアは自分が守れなかったことを悔やみ、そんな自分に怒り、泣いた。

 そして―


 ―五年が過ぎた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二人ぼっちの天才魔術師 しみしみ @shimishimi6666

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ