第4話 夜戦
モルンとの自己紹介を軽く終え、話は作戦会議に移る。
「今回のモルンの目的は? 」
俺が問うと、モルンが答える。
「もちろん、長老や妹、さらわれた仲間の奪還だぞ! 」
「おっけーだ、ただし俺らもただ働きする気はないんでな、俺らの目的も同時に果たそうと思う」
「おいらにできることならお安い御用だぞ! 」
「俺らは魔族の言葉で書かれた魔法書、グリモワールを集めているんだ」
「マゾクの魔法書、それって長老が持ってるやつのことか? 」
「なに? 」
「長老は新しい子供が生まれると決まってその小難しい本を読むんだぞ、でもそのおかげでおいらたちは透明魔法を使えるらしいぞ」
「リア、これは好都合だな」
「モルンちゃん、私たちがさらわれた仲間さんたちを助けたら、一日だけその本貸してもらえる? 」
「もちろんだぞ! といいたいけどそれは長老に聞かないとわからないぞ……」
「なるほど、まあなんとかなるだろ」
「大丈夫だぞ! おいらが説得するぞ」
「おっけーおっけー、じゃあ今夜攻め込もう」
「なんで夜なんだぞ? 」
「夜のほうが俺らは動きやすいからな」
「わかったぞ! おいら本当は夜行性じゃないけど頑張るぞ! 」
「よし、決まりだ」
それから、俺とリアで細かな作戦を立てた。概要はこうだ。
まず闇夜に紛れて城までいく。そして俺が正門をぶち破り、注目を俺に集中させる。
その間にモルンとリアで地下牢へ行き、救出する。
鍵がかかってるだろうが、モルンの透明化とリアの魔法があればなんとかなるだろう、というなんとも詰めの甘い作戦。
まぁ、いつも予定どおりなんて行かないしなんとかなるだろう、ってことで決まった。
やがて辺りは暗闇に包まれた。
さあ、作戦開始だ。
透明化したモルンと黒装束を纏ったリアのチームと、俺で二手に分かれて行動を開始した。
さて、どういうルートで正門まで行こうか。
というのも、ベリアルの城下町はかなり賑わっており、姿をくらまし易いがその分ばれやすい。逆に路地裏に行けば夜ということもあって治安が悪く、余計な戦闘を起こす可能性がある。
かといって屋根伝いにいけばそれこそ即座にばれるだろう。
「正面突破が無難か」
俺はあえて賑わう城下町で最も広い大通りを通って正門を目指すことにした。装いは旅人そのものなので、顔が知られていない限りばれることはないだろう。
と考えた俺が甘かった。
今朝のベアキラー両断事件があったからだろう、街の警備はかなり厳重で、屋根の上には蜘蛛型の機械兵が不審物を見はっているし、街中にもウロボロスの紋章をつけた兵隊がうようよしている。
まあ、表にウロボロスの紋章をつけて歩いてるやつらは大した戦力もない牽制役だろう。推測するに市民や旅人に紛れた実力者が紛れようとくらませた所を狙うんだろうな。
なかなかに面倒だ。と思っていた瞬間。
「隙だらけだぜ、魔術師さんよぉっ! 」
やはり推測通り、背後から旅人風な男が長剣を振りかざす。しかし気を張っていた俺からすれば、避けるのは容易いことだ。
ひらりと身をかわし、すかさず右足で腹部に蹴りを入れる。怯んだのを確認して間髪いれずに左足を大きく軌道を描かせて速さと重みを乗せた蹴りをくらわす。
旅人風な男はよろめき地面に尻もちをついた。流石に強化魔法なしの蹴りでは気絶まではもっていけないか。
そしてその騒ぎに気づき、本当の市民や旅人が円をつくるようにはけていき、注目はわっと俺に集まる。
すると屋根の上の蜘蛛型機械兵ターランや市民を装った兵隊達が臨戦態勢になって近寄ってきた。
「こりゃしんどいな」
正門まではまだまだ遠い。
どうやっていこうか悩む隙もなく、兵隊たちの攻撃がはじまる。
「身体強化魔法」
とりあえず手足の硬化、俊敏さの底上げをする。
そして剣を硬化した腕で防ぎ、即座に足で蹴る、を繰り返す。やはり強化魔法があると、蹴った時ある程度吹き飛ぶし気絶率も高いので魔法は偉大だ。
ざっと三人ほど相手にすると、他の兵士は竦んだように構えるだけ構えて距離をとった。
だがまだ安心はできない。続いてはターランの攻撃がまっている。
鋭くとがった脚部を剣のようにして振るう機械兵。
硬化した腕のおかげで傷がつくことはないが、力が強いため一体ずつしっかり腰をいれて受けなければよろけて隙を見せてしまう。
見た感じ今近くにいるのは四体。機械兵ともあって連携はさほどできないだろうから一体ずつ丁寧に倒すしかないか。
「やれやれだ、騒ぎがでかくなる前に終わらせるとしよう」
まあ、十分騒ぎは大きいんだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます