弥生の暗号
育岳 未知人
第1話 プロローグ
「お父さん、私、社会科で卑弥呼の話を聞いたわ。」と美知は、うれしそうに答えた。
私は美知の教科書を手に取り、邪馬台国のページを開いた。そこには、朝鮮半島から九州へと続く国々の道程が記されてはあったが、途中からは疑問符が付いており、諸説あるようであった。美知は何でも知りたいお年頃の十四歳、私は中年を過ぎて少しくたびれて来た光一 四十八歳、わからないことがあると、とことん追求したくなる私たちは、邪馬台国の旅に出発することにした。と言っても、まずは地図と本の世界でのことだけどね。
邪馬台国のことでわかっていることと言えば、卑弥呼は邪馬台国の女王で、時は稲作が始まったとされる弥生時代の頃ということくらいだ。何から調べたらいいのか、困ってしまった私たちは、ネットで邪馬台国を検索してみた。すると、ウィキペディアの邪馬台国の説明には、「魏志倭人伝」という中国の歴史書に記載されているとのことであった。まずは、魏志倭人伝を入手して、そこから勉強だ。中国の魏王朝(西暦220年 ~ 265年)のことを記した「魏志」は、日本でも横山光輝の漫画などで有名な三国志の一つで、その中でも倭人(昔の日本人)のことを記した魏志倭人伝は、当時の日本の状況を知る有力な手がかりとなる資料である。
アマゾンで検索すると岩波文庫で以外と安く購入できることがわかり、私はさっそく注文した。
数日後、届いた包みを開けると、以外と薄い一冊の本が現れた。購入した文庫本には、魏志倭人伝の他に、後漢書倭伝(後漢書東夷伝)なども併載されていた。
そこには難解な古文や漢文の茫洋とした世界が広がっていたが、格闘を重ねていくと新しい発見があり、思いがけない出会いが待っていたのである。
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