12-4

「じゃあ家でも毎日飲まれるんですか?」

「そう」

「うちの父もお酒が大好きなんですけど、糖尿病の気があるってお医者さんに言われてそれ以来飲む量を少なくしてるようです」

「僕も多少その傾向があるんだけど、こればっかはね」

「アルコールはなんでも飲まれるんですか?」

「まあね。夏はビール一辺倒だけど、それ以外だとまずビールからはじまって日本酒に移るんだけど、我々サラリーマンには懐に限度があるから、そんなにたくさんは飲めない」

「そうなんですか。……私もビール少し飲んでみようかしら」

「おいおい、大丈夫か? いままで飲んだことないんだろ? きみがいいっていうんなら僕は構わないけど……」

「あッ、それくらいでいいです」

「本当に大丈夫なのか? じゃあ、あらためて乾杯しよう」

「はい」

「明日会社で無理に飲まされたなんていわないでくれよな」

「そんなこといいませんよ。でもビールって結構おいしいかも……課長と飲んでいるからかもしれません」

「そう言ってもらえると上司としては嬉しいよ。これぐらいの年令になると、若い人からは嫌われがちになるからね」

「課長はそんなことありませんよ」

「おい、もう酔ったんとちがうか? でも、こうしてゆっくり話すのははじめてだけど、工藤くんは結構話をしてくれるんだね」

「どうしてですか?」

「一見すると無口に見えるから、あまり話が好きじゃない女性だとずっとそう思っていたんだけど、ちょっと安心した」

「でも、これが最初で最後かもしれません」



                (了)

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幻 夢(げんむ) zizi @4787167

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