12-3
「まあそれは謙遜だろうけれど、僕らは上司からそう聞かされてる」
「学校の成績なんて社会に出たら関係ありません。社会人になったら、そんな紙切れ1枚の評価よりも、社交的な人間のほうが受けがいいと思うんです。そうじゃないですか?」
「まあね」
「私は人付き合いがまったく苦手なんです。会社に入ったら人間関係を大事にしなければと思って私なりに努力したんですが、どうしてもだめで、散々悩んだあげく自然のまま生きようと決めました。それによって誤解が生じても、それはそれで仕方がないと考えを切り替えました。あっ、やだ、私……」
「そうなんだ。まあ人それぞれ悩みがあるけれど、きみが悩んでる人間関係っていうのは少なからず誰にだってあることなんだよね。僕だってこんな顔してるけど、若い時にはきみと同じように随分悩んだこともあった。だからきみの気持がわからないでもないよ。自分の思うようにすんなり行かないのが人生じゃないかなァ。あっと、ごめんごめん、食事中なのに箸をとめさせちゃって」
「いえ、ごちそうさまでした」
「もういいのかい? おなか膨れた?」
「ええ、充分です。すいません勝手なことを話しまして。きょう課長に誘って頂いてよかったです。こんなことあまり人に話すの好きじゃないんですけど、なぜか課長にはすらすら話すことができちゃいました」
「いや、話してくれてありがとう。これでも一応上司だから多少きみのことを知っておいたほうがいいからね。それと僕に話せたってことは、僕だからじゃなくて、時期的なものが左右してるね。おそらく先ほどきみが口にした『自然のままに生きようと決めた』っていう踏ん切りがきみをそうさせたんだと思う」
「そうでしょうか?」
「そうだよ、そうに決まってる」
「ところで、園田課長はお酒がお好きですか? さっきから随分飲まれてますけど」
「好きだよ。これがないと1日が終わらないと思うほど好きだね」
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