11-2
「やっぱり」
「沙保里さんも気がついてました?」
「それは私も気づいてて、ある時彼女に訊いたことがあるんだけど、そんなことないって言ってたわ。それ以外になんかない?」
「すいません、それくらいしか私には」
「いいの。別にあなたの責任じゃないから、謝らなくてもいいんだけど。ところで工藤さん『桜川』って知ってる?」
「さ・く・ら・が・わ……? いえ聞いたことありません」
「彼女がなぜ桜川という場所で入水自殺をしたのかそこんとこがまったくわからないの」
「そうだったんですか。自殺だってことは聞きましたが、それ以上のことは報らされてないですし、どの新聞にも沖田さんのことは載ってなかったものですから、その桜川とかいう場所で発見されたということもいまはじめて耳にしました」
「そうね、確かにあまり公言された内容じゃないから、知らないのも無理ないよね。私も彼女のお通夜の席でご両親に聞かされてはじめて知ったんだから。
ご両親の話によると、桜川に架かる橋桁に死体らしきものが引っかかっていると、釣人が警察に通報したらしいの。すぐに救助隊に引き上げられたんだけれど、その時すでに死亡してて、司法解剖した結果、睡眠薬服用後に入水自殺と断定したんだって」
「そうなんですか。なにかその話を聞いたら原因が知りたくなるのは無理ないですよね」
「そうでしょ? 遺書があれば別だけど、それもないだけに余計と気になってね」
「こんなことになるなんて、私、想ってもみませんでした」
「私だって同じよ」
「工藤さんは余程思いつめたことがあったんでしょうね」
(……うふふ……うふふ、うふふ)
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