沙保里と工藤有美の会話 11-1

「工藤さん、急に呼び出したりしてごめんね。仕事のほう大丈夫だった?」

「ええ、ちょうどきりがついたとこでしたから」

「それならいいけど……。きょうは私が呼び出したんだから好きなもの頼んで。奢るから」

「ええ? でも……」

「いいのよ、遠慮しなくても」

「じゃあ、アイスティを」

「ケーキもいいのよ」

「ほんとですか? だったらモンブラン頼んでいいですか? 私、甘い物には目がないんです」

「いいわよ。よっぽどスウィーツが好きなのね。さっきと顔がちがってる」

「すいません」

 ――

「きょう付き合ってもらったのは、あなたに訊きたかったことがあるからなの」

「なんですか?」

「この前、真由――沖田真由おきたまゆが自殺したでしょ? それについてなんでもいいから知ってることを教えて欲しいの。工藤さんは真由の隣りの席に坐ってたでしょ? ひょっとしてなにか自殺の原因を知ってるんじゃないかと思って……」

「はい。確かに席は隣りでしたが、仕事以外のことではあまり話したことがなかったので、プライベートなことはちょっと……。私よりも沙保里さんのほうがずっと仲がよかったじゃないですか?」

「そうなんだけどォ、ひょっとして私の知らない情報を持っているんじゃないかなと思ってね」

「いえ、生憎そういった仕事以外の話は聞かされてませんでした」

「いいの。――じつは彼女、好きな人がいてね、それは私知っていたんだけど、彼女の性格からしてまさかそれが原因とは想像できなくてね、ひょっとして彼女があなたになにか話しているかもしれないと……」

「そういえば、最近沖田さん急に痩せてたんです。最初はダイエットをしてるのかなと思ってたんですが、日に日に顔色は悪くなるし、元気もなくなるのが見えて、どこか具合でも悪いんじゃないかなと思うようになりました」

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