9-2

「で、このことを彼に話したの?」

「まだ。だって私にはそんな勇気がない」

「じゃあ彼はまだ知らないんだ。真由これからどうするの? 堕すの?」

「こうなったらそうするより他ないと思ってる。病院の先生もこんなこと前例がないことなのでもう少し様子を見てみたいと言ってるんだけど、堕すんなら早いほうがいいでしょ?」

「もちろんそうよ。だって真由は実験材料じゃないんだから、1日も早く手術したほうがいいわよ」

「明日もう一度検査することになってるんだけど、私なんだか怖い」

「だろうね、わかるよ、真由の不安な気持。もしあれだったら、私病院まで一緒について行ってもいいよ」

「本当に?」

「本当だよ。だって真由のためだも」

「ありがと。じゃあ、一緒に――お願い」

「いいわ。でもあまり深刻にならないようにね。あとはお医者さんに任せるよりないんだからね」

「うん。……やっぱりあの占いは当っていたのね」

「真由、なにぶつぶつ呟いてるの?」

「じつは、この間あまりにも不安だったから、新宿の当ると評判の占い師に鑑てもらったの」

「占い?」

「そう。占いって、ぶっちゃけはじめてだった。教えられた占い館に行ってみると、和服を着て白い髭を生やしたお爺さんがもっともらしい顔して椅子に坐ってた。最初はちょっと怖い気がしてやめようかと思ったんだけど、どうしても鑑て欲しかったから勇気を振り絞って坐ったの」

「私一度だけ手相占いに行ったことがあるけど、別にそんなに怖くなかった。でもああいうとこって、ちょっとそれらしい雰囲気があったほうがその気になるよね」

「そう。そこは五行九星術という占いをやってるの。私の星は三碧木星なんだけど、その占いによると、今年は低迷運で体調を崩しやすくて、それが長引いたりこじらしたりするんだって。最悪なのは異性問題で、思いがけない方向に進展するので要注意なんだって」

「そこだけ聞くとなんか当ってるみたいね」

「でしょ? さらにこの7月の運勢は八方塞がりで、思うようにならないんだって。1年中でいちばん体調がよくない月となるから普段にも増して注意が必要だって言ってた」

「ますます当ってる。でも体調のほうは病院に行ってるからいいとしても、妊娠したことを彼に報告した時に向こうがどう出るかだよね。その占いのとおりだとしたら真由には悪いけど、ちょっと心配」

「そうなんだよね。私もそこが引っかかって、結果を想像するとなかなか言い出せなくて……」

「わかる、わかる。でもね、真由、このまま放って置くわけにはいかないでしょ。いずれはちゃんと話さなきゃいけないんだから、ここは勇気を振り絞って打ち明けることね。一緒について行ってあげてもいいんだけど、話の内容が内容だけにそうもいかないわ」

「ありがとう。沙保里の気持はすごく嬉しいけど、こればかりは私ひとりで話すことにする」

「そうね、そのほうがいいと思う」

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