そして2ヶ月後 9-1
「ちょっと話聞いてくれる?」
「どうしたの? ――まさかあの彼とダメになったって言うんじゃないでしょうね」
「ちがう」
「でも真由の顔には不安な表情が浮き出てるよ」
「そうじゃなくて……。じつは……」
「どうしたのよ?」
「――私、ニンシンしたの……」
「ええッ!」
「生理が来ないのから、2日前に病院で診てもらったら、3ヶ月だって言われた。もちろん彼の子よ」
「どうするの? 産むの?」
「それが……」
「どうかしたの?」
「エコーで検査したところ、胎児の形が……」
「泣かないで、真由。ちゃんと話して――胎児の形がどうかしたの?」
「私にも信じられないんだけど、赤ちゃんに手も足もなくて……」
「まさかァ。それって奇形児ってこと?」
「どうやらそうらしいの。エコーのモニターに映し出された画像を見た先生は、信じられないといった顔で何度もモニターを覗き込んだあと、言いにくそうに説明をはじめ、それを聞かされた私は目の前が真っ暗になって、そのとたんとめどなく泪が溢れた。
正直なところ、なんとなく妊娠したことに気づいてた。私は彼の子を身ごもったことがとても嬉しかった。どうやって彼にこのことを話そうかと悩んで夜眠れないこともあった。でもそれがこんなことになってしまって……」
「真由が可哀そう」
「そのモニターに映った胎児というのが、はっきりと見えたんだけど、先生が正常な胎児の写真を片手に説明したところ、私のお腹にいる子はそれとはちがって、魚の稚魚にそっくりだったの」
「サカナの稚魚? あの目が黒く大きくて、お腹がぷっくりと膨れて尻尾のある?」
「そう」
「信じられない。ごめんね、疑ったわけじゃないんだけど、あまりにも現実的じゃなかったもんだから……」
「無理もないわ。本人の私だっていまだに信じられないも」
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