8-2
「そうよ。やっと開放された私はぐったりして、すぐとベッドから出られないほどだった。それでも、ようやく彼と一緒になることができたことで私は幸せを感じてた。ところが、それから毎日のようにデートをし、その度に明け方まで……」
「すごいね。そんなに責めつけられたら、あそこが毀れちゃうじゃない?」
「そうよ。いまでもなにかが挟まってる気がしてるも」
「それが原因で真由が痩せたってことなんだ」
「体重が減るのは嬉しいんだけど、体力が消耗して痩せるっていうのはちょっとね」
「で、真由のしたい相談って?」
「彼に抱かれるたびに、愛されるたびにいとしさが募っていって、いまでは1分でも彼のことを忘れることができなくなってしまったの」
「そんなに?」
「そう。正直言ってこれまでに何人かと付き合ったことはあるけど、こんな気持にさせられたのははじめて。だからどうしていいのかまったくわからなくて、沙保里に相談したってわけ。ねえ、私どうしたらいい?」
「そうねェ、ことがことだけに迂闊に助言することができないけど、いま私に言えることといったら、真由はつらいだろうけどしばらくこのまま成り行きに任せるよりないんじゃないかな。でもねえ真由、これだけは忠告しておきたいんだけど、絶対に深追いしたらだめよ」
「どうして深追いしたらだめなの?」
「だって真由は好きになると一途になって、のべつ幕なしにメールを送ったり、時間を考えずに自分の都合で電話連絡とったりするでしょ? それって普通男は鬱陶しがるものなのよ。だからそこをグッと我慢して、少し距離を置きながら彼を愛すの」
「ええッ、そんな罪なこと言わないでよ」
「だめ。もし真由が彼に首ったけなのはわかるけど、しつこくつき纏って嫌われたらどうするつもり?」
「やだァ、そんな恐ろしいこと言わないでよ」
「真由の気持はわからないでもない。だけどここはもひとつ我慢しないとだめ」
「わかった。真由なんとか頑張ってみる」
「そうね、そうやって前向きに考えたほうがいいと思う。マイナス思考はだめ。ところで、さっきから気になってるんだけど、真由そのピンクのネール可愛いよね、どこのネールサロンでやってもらったの?」
「ああこれ? いつも行く店なんだけど、恵比寿の駅前にあるビルの2階。『クレール』って名前んとこ」
「そうなんだ。そこって高いの?」
「ううん、そうでもない。フレンチで7、8千円ってとこかな。あ、そうそう私半額券もってるしィ、よかったらあげるよ」
「いいよ、だって真由また行くことがあるだろうしさ」
「大丈夫、当分はパス。あれって、お化粧と同じだから、一度やってしまうとなかなかやめられなくて、やらないとなんか忘れ物した気分で、つい爪先に目が行っていまうんだよね。だから結構お金がかかっちゃうのよね。それもあるけど、いま私はそんな心境じゃないから、あげるよ、はいこれ」
「サンキュ」
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