7-3
「ビールもっと飲むだろ?」
「でも、あまり飲み過ぎると帰れなくなっちゃって、この部屋に泊まることになるかもしれないけどいい?」
「えッ。――明日は日曜日だからこっちは別に構わないけど、そんなことしていいの?」
「怒る人はいないから、そのへんは大丈夫。だったら泊まってもいい?」
「まあ、きみがそうしたいと言うんなら……」
「じゃあ真由、ビールじゃなくて、雅史さんと一緒に冷酒飲んじゃおうかな」
「おいおい、酔っ払っても知らないぞ」
「だって、きょうはお泊りなんだから徹底的に飲むんだもん、真由」
「しょうがない奴だなあ。キッチンに新しいグラスがあるから持っといで」
「うーん、よく冷えてておいしい。ビールとちがってお酒を飲むと、身が引き締まる気がするのは私だけかしら」
「いや、日本人のDNAがあるならば、少なからず日本酒に対して厳粛な気持になるんじゃないかな。だって神様に日本酒は付き物だし、固い契りを結ぶ時にも欠かすことのできないアイテムなんだ。神様と言えば、諸説様々だが古事記の中に木花之開耶姫が米を噛んで酒を造ったというのがあって、これが日本酒の起源とされている。だから神と酒は切っても切れないいわゆる不可分の関係にあるんだ」
「へーえ、詳しいのね。私はそこまで考えて飲んでない。これってバチ当りなこと?」
「そうじゃない。僕はたまたま知っていただけのことだよ。ごめん、そんなつもりはなかったんだけど、つい薀蓄めいた話し方になってしまった」
「ううん、そんなことない。ひとつお利口なったわ、私」
「あ、そうだ――ちょっと待って。そう言えば、ツマミのソフトイカがあった」
「でもそんなに食べたらご飯食べられなくなるよ」
「その時は、その時。時間を置いてから食べればいい。いまはきみと冷酒を愉しもう」
――
「私、酔ったみたい。帰らなくていいと思ったらなんかほっとして……」
「酔った真由も魅力的だよ」
「ほんと? ねえ雅史さん、私のことどう思ってる?」
「好きだよ、死ぬほど好きだ」
「嘘じゃない? ほんとにそう思ってくれてる?」
「本当さ。でなきゃ部屋まで呼んだりしない」
「嬉しい。ねえ、強く抱きしめて優しくキスをして」
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