6-3

「ごちそうさま。ところで、その彼はなんていう名前?」

池神雅史いけがみまさふみっていうのよ。いけは水の『池』、がみは神様の『神』で雅は雅子さまの『雅』、そしてふみは歴史の『史』」

「ふうん。で歳はいくつ?」

「28」

「仕事は?」

「はっきりとは聞いてないんだけど、商業カメラマンみたいなことを言ってた」

「写真家? カッコいいじゃん。真由逃さないようにしっかり捕まえておかないと……」

「でも……」

「なにかあるの?」

「彼があまりにもカッコよすぎるから、他にも彼女がいっぱいいそうで、それが心配で……」

「なに言ってんの、普段の真由らしくもない。そんな疑うようなことがあったわけ?」

「そうじゃないけど、逆にそれがないだけに余計に心配……いやァ、私どうしよう」

「あらあら、これは重症だわ」

「ねえ、沙保里、どうしたらいいと思う?」

「そうねえ……だったら、早いこと既成事実を作っちゃったら?」

「ええッ? それってエッチしろっていうこと?」

「そういうこと。それしかないでしょ、彼を引き止めておくにはそれしかないでしょ」

「だって……」

「煮え切らないわねェ。本当にいつもの真由らしくないよ。これはマジで好きになっちゃったな。ね、そうでしょ?」

「まあ本音を言うと。でも……」

「ああぁ、もうじれったいんだから。まだなんかあんの?」

「ひとつ気になることがあるの。それは、彼は隠すことなくなんでも開けっぴろげに話してくれるんだけど、こと身内の話になるともひとつ歯切れがよくないんだよね」

「家庭が複雑なのかな?」

「いや、わかんない」

「まあ、でも、誰だって話したくないことのひとつやふたつはあるじゃない。そんなことは時間が解決してくれるから、気にせずに彼のハートをキャッチすることだけを考えればいいよ」

「そうね、私頑張るわ。きょう沙保里と話ができてよかった。既成事実の結果は後日詳細に報告するから、愉しみにしてて」

「そうする。さあ、お好み焼を早いとこ片づけちゃって、カラオケ行こうよ」

「賛成ーェ!」

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