6-2

「ねえ、そろそろカレシのこと話してみない? その彼とどこで出会ったのよォ?」

「それがまったくの偶然でね、私が会社の帰りに急いで歩いていたら、ビルから出て来た彼とぶつかりそうになって、咄嗟に避けようとしたんだけど間に合わなくて、その時彼が手にしていた携帯が歩道に転がってしまったの。すぐに拾って謝ったのが最初。それだけなら付き合うことにならなかったんだけど、それから先があるのよ」

「なによ、もったいぶってェ。さっさと話しなさいよ」

「もう、沙保里ったら、せっかちなんだから」

「お腹が落ち着いてきたら早く聞きたくなって」

「それでね、その時は私が謝って済んだんだけど、次の日CDが欲しくて、渋谷の店に行ったの。最初まったく気づかなかったんだけど、店内を歩き回っててやっとお目当てのCDを見つけたと思ったら、偶然にもそこに彼がいたというわけ」

「ふんふん、それで?」

「昨日のきょうだから知らない顔をするわけにもいかなくてさ、昨日はすいませんでしたと声をかけたところ、思いがけなくも彼のほうからお茶を誘われてしまって、一度は断わったんだけどお茶くらいならいいかと思ってOKしちゃった。私の好みのタイプだったということもあったんだけどね」

「それで、その彼ってどんな感じなの?」

「背がスラリと高くて、髪はややロング。目元がはっきりしてて一見モデル風」

「ええッ、マジぃ?」

「嘘じゃないよ。でなきゃ声かけられてノコノコついて行かないって」

「そりゃあそうだけど……。そんなおいしい話あるのかなァ」

「ある、ある」

「で?」

「それが切っ掛けになって、毎日のように会うようになったの。土日なんかは連ちゃんでデートしてる。彼ってとても優しくて思いやりがあるの」

「ごちそうさま。そいで、デートは彼のほうから誘って来るわけ?」

「最初の3回は彼からだったんだけど、それ以後はもっぱら私のほうから誘ってる。だって、毎日彼の顔を見ないと眠れないんだもん」

「ってことは、真由は彼にメロメロになってしまったってこと?」

「うふふ、まあそんなとこかな」

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