雨夜の訪問者 5-1
「はーい、どちらさまです?」
「夜分に恐れ入ります。わたくしは、工藤有美さんのお父さんの知り合いの者です」
「はあ。いま開けますからしばらくお待ちください」
「あ、どうも。はじめまして」
「ああ、は…い。はじめまして。なにか……?」
「あのう、連絡も差し上げずに突然お邪魔して申し訳ありません。じつは折り入ってお話したいことがございます。といってもここでは話ができません。できれば中に入れていただければ……」
「えッ! いくら父の知り合いとおっしゃっても、それはできません。それに、まだお名前も伺っていませんし」
「そうでした。わたくしは
「池神さんですね? 念のために父に電話してみますから、少し待ってもらっていいですか?」
「いや、お父さんに聞かれてもわたくしの名前をご存知ないでしょう」
「それってどういうことです?」
「名前を名乗ったことがないからです」
「名前も知らないのに知り合いなんですか?」
「それも含めてお話がしたいのですが、先ほども申しましたように廊下では少し話しにくい内容なので……。どうでしょう、15分だけ時間をいただけませんか?」
「でも……困ります」
「ではこうしたらどうでしょう、玄関のドアを開け放っておく、もしくは身に危険を感じたらすぐに警察に電話できるように携帯電話をスタンバイさせておくという方法はどうでしょう? 隣りの部屋の方に声をかけておいてもいいです」
「はあ」
「さっきも申しましたように、けして怪しいものではございません。話を聞いて頂ければ納得してもらえると思います」
「そこまで言われるんでしたら、池神さんがおっしゃるように、ドアを開けたままにして携帯をいつでも送信できるようにしておきます。時間はきっと15分だけですよ」
「はい。ありがとうございます」
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