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「そんな怖い顔して言わなくてもいいじゃない。ただあいつは話すに値しない男だったから沙保里に話さなかっただけのことよ。まあ、結論から言うと私の男を見る目がなかったということになっちゃうんだけどね」

「あらァ、恋愛の達人と異名を取る沖田真由の口からそんなことを聞かされようとは……」

「やめてよ、私は沙保里が言うほど恋愛経験は多くないんだから」

「まあそういうことにしとこうか。それより、真由のそのオレンジ色のチュニックとブルーのデニムパンツよく似合ってる」

「マジでェ? ちょっと派手かなと思ったんだけど、そうでもない?」

「そんなことない、ない。ねえ、ところでピザのあとなに食べようか?」

「そうねェ、私はカルボにしよっかな。沙保里はどうする?」

「私、きょうはシーフードドリアの気分。それと……シーザーサラダも食したい。ねえ、半分ずつしない?」

「いいわよ。ちゃんと野菜も摂らないとね」

「そうよ。じゃあそれでオーダーするわね。……すいませーん。カルボナーラとシーフードドリアをひとつずつ。それと、あとシーザーサラダもお願いしまーす。ねえ真由、シーザーサラダって語源知ってる?」

「語源? それってあの有名な古代ローマのシーザーじゃないの?」

「ブー、残念でした。このサラダのシーザーっていうのは、ドレッシングを考案した人の名前」

「へえー、そうなんだ。でもなんで沙保里はそんなこと知ってるの?」

「この前たまたま電子辞書を見てたら書いてあった。あれって結構便利なのよね。小さくて持ち運びできるし、料理のことも調べられるし」

「いいね。私も買おうかな」

「まああって損なことはないわね。話しちがうけど、ここってタバコ喫ってもいいのかな?」

「いいんじゃない、だってここに灰皿置いてあるし」

「そうだよね。ねえ見て、知らない間に席が埋まってるよ」

「ほんとだ、話に夢中になってたから全然気がつかなかった。結構人気があるみたいね、このお店」

「そうみたい」

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