第2話
突拍子のない状況に戸惑っていると、ドアの開く音がし、硬い靴音がこちらへと素早く近寄ってきた。身構える間もなく、白衣を羽織った癖毛の男がひとり、私達の眠る寝台を覗き込んできて、感極まったように叫んだ。
「ああ! ようやく目が覚めたんだね!」
寝起きにいきなり叫び声を浴びせられ、私達は思わず眉を寄せたが、そんなこちらの様子には全く頓着しない様子で白衣の男は続けた。
「よかったよかった! 本当はもう少しゆっくり休ませてあげたいところだが、いやはやそうもいかない。忙しいあの人たちにはとにかく時間が無いからね、あの人たちがここへ来る前に、君とは一度ちゃんとお話しておかないといけないと思っていたところだ! さあ、起きたらその病人服から着替えて、朝食……いや、もう昼だな。食堂で昼食をとりなさい」
そう言われて、私は自分の着ているものを見た。薄っぺらい病衣の下、頭と体中に手当のあとがある。
「ここは?」
私は再び、白衣の男のほうを見た。およそ三十代に見える彼は黒髪だったけれど、日本人ではなさそうだった。目が青い。大学の先生か学生のようなアイボリーのワイシャツとタータンチェックのベスト姿で、その上に羽織った白衣の袖は長く伸び、指先がわずかに覗いている。
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