空模様
サンダルウッド
第1話「逃避」
同僚達に機械的な「お疲れ様でした」を投げかけて外に出ると、絶望的なほどに曇りがかった空が目に入った。雨はまだないが今にも降り出しそうな、まるで虚しさでこぼれ落ちそうな涙をこらえるかのような
いつもの整腸剤を買うために駅前の薬局に立ち寄ると、店内から――有線放送のようだ――聞き覚えのある前奏が流れ始めた。上原あずみの『生きたくはない
学生時代、人との関わりが不器用だったことに苦悩した。
同年代の若者が生き生きと日々を満喫しているのを横目に、
努力が欠如していたと思う。人並みの幸せをつかむための努力を怠ってきた、当然の結果である。愚痴をこぼしたり、
今の暮らしに落ち着いてからは、音楽鑑賞が主たる逃避行動となった。
この期に及んで白々しく
帰宅ラッシュというほどには混雑していない中央線の中で、Sonyのウォークマン――物持ちはあまり良いほうではないが、十年以上壊れずに使っている愛用品だ――で
「僕が僕である限り 何度やっても同じことの繰り返し」という歌詞が出てくるが、言い得て妙だと思う。どんなに
駅舎から出ると、グレイの空はすっかり黒に覆われていたが、
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