第28話 ライル考える

「だって約束したじゃないですか。ライルさんが狙われていたら、護衛を任せると。

 だから、安全になるまでライルさんの部屋に住み着きますから! 決定事項ですからね!」


 ということで、私の抗議は全て無視され、彼が家に住むことになった。

――というか、押しが弱すぎないか? さっきも今までもそうだ。最初はなんとか押し返していたが、気付けば、彼に私のことを話していた。あの時は、だからお前専属の加工術師にも、師匠にもならない――そう言うつもりだった。

 だが、パーティーを組もうと言われ、条件を付けたが、結局パーティーになっている。そして、彼の実力を見る為のクエストの後に、彼を泊まらせている。

 極力人と関わらないようにしていたはずなのに、何故か彼と行動しようとしている。このままではいけない。



「君、家の中ではなく、外に住んでくれないか」

「え!? な、なんでですか!?」

「当然だ! 私は人が嫌いなんだ!

 なのに、気付けば君と共に行動するようになっている! これ以上、私に関わらないでくれ!

 その食事会とか武具を買いには一緒に行く。君のクエストも一緒に行こう。私の仕事も見せる。

 だが、家の中には住ませない。絶対にだ!」


 私の必死の剣幕が通じたのか、彼は私の家の使っていない小屋に住むことになった。少し不満そうだったが、野宿じゃないだけマシだと思うがな。

 私は彼を利用し、されているだけだ。彼は私の友人でも弟子でも仲間でもない。それをしっかり理解してもらいたいものだな。





 だが、私が大声を発したせいで医者に怒られたのはここだけの話である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る