第27話 夢から覚めた後

『――そうして、勇者は邪神ドルゲイスを倒しました。それによって、世界は平和となり、勇者は助け出した姫と結婚したのです。国の誰もが二人を祝福しました。そして、勇者と姫は一生幸せに暮らしましたとさ。おしまい。

 どう?面白かった、ライル』

『はい! 母上! ゆうしゃさまがみんなのためにたたかうところがとくにかっこよかったです!

 わたしもいつかゆうしゃさまのように、まほうとけんをつかって、せかいをすくいたいです! みんなをまもるまほうけんしになります!』

『ふふ、立派な夢ね。大丈夫よ、ライル。ずっとその想いを持っていれば、いつかその願いも叶えられるわ。夢を大事にね』


――ライル、あなたの未来が幸せなものでありますように。


――――




 目を開けると、そこは見知らぬ天井だった。

 とても懐かしい夢を見た気がする。暖かくて、優しいそんな夢を。まるで、死んだ母の笑顔を見たようなそんな気分だ。


「! ライルさん、目が覚めたんですね」

「――ここは。……そうか、私は倒れたのか」

「はい! 運動したことによる疲労で倒れたって医者が言っていました!」


 目覚めたばかりには大きな声だが、彼がとても嬉しそうだということは分かった。


「……で、あれからどれ位経ったんだ?」

「丸一日です!」


 そんなに寝ていたのか。そういえば、普段ではあまり感じない空腹を感じた。


「目が覚めたら退院していいって言われました! レオーラさんに頼んで服の用意もしてもらいました!」

「準備がいいな」


 彼から服を受け取り、着替えようとする。すると、何故か体をまじまじと見られた。


「? どうした」

「……あの、ライルさん」

「なんだ?」

「もっとご飯食べた方がいいんじゃないですか?」

「いや、私は小食だと言っただろう。あまり入らないんだ」

「でも、ライルさんを運んだ時、とても軽くてびっくりしたんですよ! その体も、肉がついていなくて心配なんです!」

「そ、それは言うな!」

「だから、3日後レオーラさん家で食事会することになりましたからね!」

「――なんでそうなるんだ……」


 どうやら、私が寝ている間にレオーラと話し合って決めたようだ。意識がない間に勝手に決められて、迷惑だ。だから嫌だといったのだが、押しが強すぎて負けてしまった。

 仕方ないので、私が仕事が終わったらと、武具を新しく買うことを約束させた。


「でも、なんで武具を新調しなくてはいけないんですか? 俺はまだこれで戦えますよ!」

「別に、わざわざ買わなくてもいい。だが、その剣と鎧のままでは駄目だ。

 シャドーモンスターまでの敵ならそれでも大丈夫だろう。だが、今回のような黒ワンピースを着た奴と一緒にいた女のような敵がまた現れたらどうする?」

「うっ、そうですね……。

 で、でも! ライルさんが俺の前で初めて加工術を施してくれたこれ等は、大事にしますからね!」


 それは前にも聞いたから、勝手にしろ。と、言ったら何故か喜ばれた。何故だ。


「というか、3日後に一緒に武具を買いに行きましょうよ! レオーラさんの家に行く前に!」

「いや、一人で行ってくれ」

「嫌です!」


 笑顔で言うことじゃないだろう。という言葉は彼の衝撃的な言葉に遮られた。


「あ、そうでした。

 俺、今日からライルさん家に住むことにしましたから、よろしくお願いしますね!」


「……は?」

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