閑話 あなたが起きるまで セティ視点
ライルさんを背中に抱っこして、ぺリティカ王国まで走り、すぐ評判のいい診療所へ向かった。
どうやら、医者によればライルさんは肉体の疲労で倒れたようだ。点滴をすれば1日で目覚めるだろうと言われた。
回復魔法は確かに傷や状態異常を治すことはできるが、疲労まで治すことはできない。今まで、ちゃんとした運動をしていないライルさんが、普段では考えられない量の運動をしたんだ。当然だろう。
俺は、ライルさんが起きるまで隣で見守るつもりだ。
「ライルちゃーん、元気ぃー? って、あら。まだ起きていなかったのね。ごめんなさい、あたしったら大声だしちゃって」
そんな時、レオーラさんが花を携えて見舞いにきてくれた。
「あ、はい。できるだけ声は小さめにお願いします。
それにしても、レオーラさんが無事で良かったです。それと、ありがとうございます。あの時、レオーラさんが居なかったら、どうなっていたか……」
「いいのよ。2人が無事ならそれで」
レオーラさんは、そう言いながらウインクをした。
「それにしても、ずっとライルちゃんを見てるつもりなの? 疲れたら交代するわ」
「大丈夫です。それに、ライルさんが起きるまで、寝れそうにないんで」
「そう……」
しばらく、二人とも何も話さないでライルさんを見ていた。
沈黙を破ったのは俺からだった。
「あの、少し聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「えぇ、いいわよ。なんでも聞いてちょうだい!」
「えっと、じゃあ、2人って友達なんですか?」
ずっと、気になっていたことを聞いた。ライルさんは違うというけど、そんな風に見えなかった。なんだかんだ、レオーラさんの事は信頼しているように見えたから。
「……そうね。あたしはそう思っているわ。でも、彼は違うみたい」
今まで見たことのないような、切なげな顔をするレオーラさん。――もしかして、
「レオーラさんって、ライルさんの事が好きなんですか?
「へ?
うふふっ、違うわよ。確かに、友人としては好きだし、気に入っているわ。でも、セティちゃんが言うような好きじゃないの。
それにしても、セティちゃんも面白いこと言うのね。びっくりしちゃった」
「だ、だってレオーラさんは男の人が好きなんですよね。だから、ライルさんのこともそうなのかなって」
「あらあら、あたしにもタイプはあるのよ? 確かに、初恋ではあるけどね」
「!?」
「子どもの頃の話よ。それに、どちらかというとレオンのって言った方が正しいかもしれないわね」
「そう、だったんですね」
レオンの、ということはレオーラさんとレオンさんは別の存在なのだろうか。話を聞いて、そんなことをぼんやりと思った。
それにしても、俺はライルさんについて何も知らない。だけど、レオーラさんはそんな彼を昔から知っている。なぜだか、少しモヤモヤする。なんでだろう?
「それにね、ライルちゃんを変えられるならセティちゃんだけ! って思っているのよ?
だって、あのライルちゃんが一緒に誰かと居て、家に泊まらせて、パーティーも組んじゃったのよ?
今まで誰も関わろうとしなかった人嫌いのライルちゃんが。いえ、これは正しくないわね。」
「え、ライルさんって人嫌いじゃないんですか?」
「本人も他人もそう思っているようだけど、違うのよ。
本当は怖いの。誰かに裏切られるのが。だから、誰とも関わろうとしてこなかった。
そんな彼が自分から関わろうとしているのよ? 昔の夢とか自分の魔法剣士とか関係なく、きっとセティちゃんに惹かれているんだと思うわ。自分でも気付かない内に」
あのライルさんが?
「そうですかね?」
「まぁ、惹かれているかどうかはただの推測だけどね。
でもね、できれば彼と一緒にいてあげて。例え、何があったとしても。」
いつものふざけた調子じゃなく、真剣な面持ちでいうレオーラさん。その言葉に、俺は頷いた。
「はい! 例え、ライルさんが嫌がっても、付き纏います!」
「こ、声が大きいわよ。そ、それにそこまでしなくてもいいんじゃあないかしら?」
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