第21話 バルチェリア森林

 光が治まると、バルチェリア森林に着いていた。ここは、ぺリティカ王都の近隣にあり、豊富な植物が自生している。モンスター達も小さく弱く穏やかな性格のモンスターばかりだ。ぺリティカ王国の子どもの遊び場でもあった。だが、今はそのモンスター達の気配が一つもしない。危険を察知しているのだろう。



 気付けば、目的地を目視できるほど近付いていた。その建物は、どの木よりも高く、無数のように枝が分かれ、太く大きな根を張っている。それは、扉が付いていなかったら、自然の大樹に勘違いするだろう。だが、それもそのはず。この建物は、実際の大樹の中を空洞にして、そこの地下とその中に設備や内装を拵えた建物である。その建物の数人に黒い不審者が二人ぐらい、扉の前に立っている。誰も入ってこないようにしているのだろう。

 この施設は、ぺリティカ王国の『魔波発信所』である。なぜ、こんな森の中にと思うかもしれないが、このような自然の場所こそ魔素が豊富なのだ。だから、各地の『魔波発信所』は湖や山、海など、大自然の側や中に造られる。その『魔波発信所』が奴等に狙われているのかもしれない。そう気付いたのは、この国の戦力を総出にして戦っているところだった。


 普通、この国の戦える者が王都に駆り出されたら、手薄になるのは王城と考えるかもしれないが、違う。この国の王は戦闘狂で、自分から戦うような王だ。それもS級クラスの冒険者に匹敵するほどの腕前だ。いちよ名ばかりの近衛兵はいるが、あの人に着いてこれる人間が居たとしたら、セティやレオーラ位だろう。

 もう一つ、手薄になる所が『魔波発信所』だ。ここには兵士が数人在駐している。しかし非常時には、ここからも兵士を動員し、誰もいなくなる。職員はいるが、非戦闘員で、気絶させられば、なんの問題もない。いちよ気配を感知することが出来る魔法を施しているが、それでも向こうはそれを無効化する何かを持っているかもしれない。

 まぁ、今一番するべきことは、どうやって監視の目を欺いて潜入するかだ。

 とりあえず、空間魔法で空の鞄を向こうの所まで移動させる。草に触れあい、音が鳴る。


「! 誰だ!」


 一人がその場を離れる。それを見逃さず、残った一人に睡眠魔法弾を放つ。見事的中し、眠りに倒れる。そして、片割れが倒れた事に気付いたもう一人にも、間髪を入れず同じ魔法弾を放つ。それによりもう一人も倒れ、監視している人間がいなくった。さっと草陰から『魔波発信所』前と出る。


 ここからが正念場だ。失敗したら、私だけではない。いま王都内にいる者達も、避難した者達も死んでしまうかもしれない。私だけの力ではどうしようもないだろう。それでも、何もしないのだけは嫌だ。例え、死ぬかもしれないとしても、私は逃げない。誰かのためではない。私がただ納得したいから、行っている。ただ、それだけだ。


 一回深呼吸をした後、『魔波発信所』の扉を開けた。

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