第19話 悪い予感
――時は少し遡る。
救急テントには軽傷者が多かったが、今すぐに治さないといけない者達もいた。だが、人数が足りなく、あまりに酷い傷はこの設備にある回復魔法は効かないようだ。今にも死にそうな冒険者や兵士に回復魔法弾を放つ。魔石の魔力の消費は激しいが、命には代えられない。それに、彼に十分に補充してもらったから、まだ余裕はある。
重傷者を全員回復させた後、治療班に新しい回復の加工術を施した紙や石を渡した。それに加え、回復弾とそれを使う魔法銃を新たに作り、魔石を数個置いていき、その場を後にした。ずっと、救急テントに居るわけにはいかない。
私の予想が当たっているかどうか調べるために、治療中にドールを飛ばし偵察に行かせた。結果、私の予想が当たっている可能性が高いようだ。その場所に、少ないが黒い奴等が居るのを見つけた。本当に私の予想通りならば、早く対処しなければ、この王都、いや国全体が地獄絵図と化してしまう。
「あら、ライルちゃん! 来てくれたのね! って、セティちゃんはどうしたの?」
どこか転移装置を使える場所がないか探していたら、レオーラと出会った。丁度いい。
「すまないが、今は話している時間が惜しい。できれば、今すぐ『金獅子亭』の転移装置を貸してくれないだろうか」
「……何か事情があるみたいだな。それなら、キリ!」
「はい、何でしょうか」
「彼を『金獅子亭』に連れて行ってくれ。今すぐにだ」
「かしこまりました」
レオーラ、いや今はレオンか。いつもより低い声になり、彼の秘書のキリに私を『金獅子亭』にまで運んでくれるように頼んでくれるようだ。
「そ、その前に少しいいか?」
「ん?」
「もし彼に会ったら、伝えてほしいことがあるんだ」
「あらぁ、告白ぅ?」
「違う! というか、レオーラに戻っているぞ!」
私が今から行くところを彼? 彼女? に伝えて、キリという秘書に『金獅子亭』まで運んでもらう(……姫抱きだったのが許せないが、そこは気にしている場合ではない)。彼の事だから、もう転移石を使って合流しているはずだ。だが、まだ来ないということは、強敵が出たか転移石が壊れた可能性がある。そのための伝言である。
ギルドに着き、入り口でレオーラの秘書と別れ、奥にある転移装置に向かう。
座標を設定し、転移装置の上に乗る。ちゃんと彼に伝言が届くといいのだが。少しの不安と胸騒ぎを覚えながら、転移の光に包み込まれた。
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